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政治教育と民主主義

リット政治教育思想の研究

政治教育と民主主義
著者 宮野 安治
ジャンル 教育学
政治
出版年月日 2014/10/15
ISBN 9784862851970
判型・ページ数 菊判・208ページ
定価 本体3,800円+税
在庫 在庫あり
 

目次

はじめに

序論 「民主主義の哲学と教育学」への道

第1章 文化教育学における「ナショナリズム」問題
第1節 文化教育学の構想と展開
第2節 「ナショナリズム」対「インターナショナリズム」
第3節 「交差」原理と共和国擁護の立場
第4節 「文化科」問題と「ドイツ科」批判

第2章 ヴァイマル期の公民教育論
第1節 ヴァイマル共和国における「公民教育」論議
第2節 国家の本質と公民教育
第3節 公民教育における国家の理念と現実
第4節 「大学と政治」をめぐって

第3章 ナチズムとの対決
第1節 反ナチズムの態度
第2節 ナチス国家と精神科学の課題
第3節 人種論的歴史観の解剖
第4節 哲学と時代精神

第4章 ドイツ精神とキリスト教
第1節 ローゼンベルクの『20世紀の神話』
第2節 人種理論の検討
第3節 本質形成と出会い
第4節 「他者との出会い」論の意味するもの

第5章 国家暴力と道徳
第1節 ペスタロッチの人間学
第2節 自由と暴力
第3節 暴力のデーモンと道徳的良心
第4節 『わが闘争』の自然主義

第6章 民主主義と政治教育
第1節 「民主主義」対「全体主義」
第2節 エティンガーのパートナーシップ論
第3節 民主主義への政治教育
第4節 政治教育における闘争

第7章 共産主義と自由の問題
第1節 ソヴィエト化と教育の自律
第2節 共産主義批判の諸相
第3節 共産主義と民主主義における自由
第4節 残された問題

結論 「民主主義の哲学と教育学」からの道

あとがき/索引

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内容説明

政治と教育は相容れないが,両者を分離することも困難である。近代国家の成立以降,国家は教育を取り込み支配しようとし,国民を自らの掌中におさめるため特定のイデオロギーを教育に注入しようとした。教育の側では教育の自由,自立,中立性などを盾に政治の支配から自己を防御しようと努めた。
本書は哲学者であり教育学者でもあったテオドール・リット(1880-1962)が歩んだ民主主義の哲学と教育学への道を辿り,民主主義とは何か,政治教育とはいかにあるべきかを考察する。リットはヴァイマル期には理性的共和主義者として,民主主義はナショナルな理念であると考えていたが,ナチズムや共産主義という全体主義の経験をへて民主主義が唯一の選択肢であると確信する。彼は民主主義とは多数の価値や意見や関心の〈差異性〉を含意する多数性であり,多領域にわたる諸自由の均衡と人格の自由を保証するもので,そのための政治教育の重要性を主張した。
リットが生涯にわたって考察した,ナショナリズムとインターナショナリズム,公民教育論,ナチズム批判,異文化との出会い,国家と暴力,民主主義と全体主義,共産主義と自由などは,今日の政治思想,政治教育思想を考えるうえで豊かな示唆を与えるに違いない。

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