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文明社会の貨幣

貨幣数量説が生まれるまで

文明社会の貨幣
著者 大森 郁夫
ジャンル 歴史 > 経済史
出版年月日 2012/01/25
ISBN 9784862851253
判型・ページ数 A5・390ページ
定価 本体6,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次

第Ⅰ部 文明社会の貨幣――歴史的・理論的・方法的序説
第一章 緒論 文明社会における貨幣のフォルム
「一七世紀の危機」と貨幣の役割/〈貨幣=富〉観をめぐるパラドクス/貨幣数量説の文明社会論的考察
第二章 初期貨幣理論の諸形態――数量説とその対抗理論
貨幣数量説をめぐる諸見解/初期数量説の論理構成/対抗諸理論の系譜
第三章 インテルメッツォ 本書の構成と方法
本書の構成/若干の方法的スケッチ

第Ⅱ部 文明社会における「貨幣の豊富」――〈二人のジョン〉を中心に
第四章 「貨幣の豊富」の経済理論(1)――ロックの影響
「貨幣の豊富」と「不足」について/ジョン・ロックの機械的数量説/ジェイコブ・ヴァンダーリントの正貨自動調整論/ジョージ・バークリィの条件設定――「他の事情が等しいならば」の内容/ジョウゼフ・ハリスの実物分析
第五章 「貨幣の豊富」の経済理論(2)――「ローの企画(スキーム)」の衝撃
ジョン・ローのロック数量説批判――需給説的貨幣価値論の復活/モンテスキューの価格数量説/リチャード・カンティロンの連続的影響説/〈二人のジョン〉を取り巻く数量説的環境――ヒュームへの小括

第Ⅲ部 文明社会の危機と貨幣――理論化と多様化
第六章 デヴィッド・ヒュームの新しい数量説
文明社会における貨幣の性質と機能/正貨自動調整論の提示と比例性への懐疑/連続的影響説と「貨幣の豊富」/ヒューム型数量説の誕生/経験論の方法と一八世紀貨幣論争の始まり
第七章 ジェイムズ・ステュアートのヒューム数量説批判
アートとしての貨幣/「モンテスキューとヒューム両氏の学説」/数量説批判の諸条件/数量説による「統合」の論理と有効需要論/数量説を超えて
第八章 結び 文明社会の危機とアダム・スミスの数量説認識
文明社会の現実とヴィジョン/貨幣機能と「法学講義」の自動調整論/『国富論』における反数量説的言辞と数量説的思考の残渣/文明社会の貨幣――<貨幣=富> 観の終焉?

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内容説明

本書は17・18世紀のおもに英仏において,貨幣数量説が生まれるまでの経緯と,ヨーロッパ文明社会を舞台にした誕生のドラマを描くとともに,社会形成に貨幣的契機が果たした役割を明らかにする。
17世紀後半から18世紀にいたる時期は〈17世紀の危機〉と呼ばれる全ヨーロッパ的規模での,封建制から資本主義への全般的な転換過程であった。そのような社会的環境のなかで危機を克服するために数量説的思考が生じた。17世紀後半から18世紀にいたる時期に提示された貨幣理論は多種多様であり,現代にまで続くいくつかの貨幣理論はこの時期に開発された。
社会の発展を決定づける経済的基盤は〈貨幣=富〉観が象徴するようにそれ自体が価値を持つ貴金属貨幣の動向によるとされてきたが,ジョン・ロック以降,それを政策論的に否認して貨幣数量説を新たに定式化した。本書は数量説が他の諸理論と多様な交渉を経ながら展開し変容していく姿を,ヒュームをはじめバークリィ,ジョン・ロー,モンテスキュー,カンティロン,スチュアート,スミスなどのテキストを踏まえて丹念に跡づけ,貨幣数量説誕生の現場を多面的に解明した画期的な業績である。

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