ホーム > 逸失利益の研究

逸失利益の研究

経済学から見た法の論理

逸失利益の研究
著者 二木 雄策
ジャンル 経済学

出版年月日 2010/05/10
ISBN 9784862850812
判型・ページ数 菊判・212ページ
定価 本体4,200円+税
在庫 在庫あり
 

目次

1 本書の視点――逸失利益とは
2 逸失利益の算定――逸失利益の求め方
基本的な考え方/数式で示した算定方式/算定方式の検討
3 逸失利益は公正か(1)――成長とインフレ
公正な逸失利益とは/過去の判例/インフレと割引率/補足
4 逸失利益は公正か(2)――低金利をどう捉えるか
逸失利益と低金利/低金利の扱い方/「二者併用」的な割引率
5 逸失利益の「一般理論」――金利と物価
この章の問題/算定の「一般理論」/補論
6 逸失利益と遅延損害金――裁判所の論理と数理
遅延損害金は「単利」か/遅延損害金と割引率/遅延損害金と自賠責保険金
7 判決の「文章」――誰のための判決か
難解な判決文/「糊と鋏」
8 最高裁判決(平17.6.14.)について――その論理を問う
閑話休題/下級審の判断/実質利子率/上告審/付加的な理由
9 最高裁判決の余波――残された途
最高裁判決の《解説》/最高裁判決の論評/新しい動き/残された途
10 結び

このページのトップへ

内容説明

この半世紀の間に交通事故により50万人以上の人々が犠牲になった。それに伴い損害賠償をめぐる多くの訴訟が起こされた。賠償問題の中心は当人が生きていれば得たはずの所得を算定する逸失利益の問題である。この数値は私たちの社会が生命を奪われた被害者に対して与えた経済的評価に他ならない。
家族を交通事故で失い,民事訴訟を通してこの問題に直面した経済学者である著者は,法廷でまかり通っている論理が経済の論理としても市民感情としても驚愕すべきものであることを見出す。
賠償金額は,一定の基礎収入を就業可能期間(18歳から67歳)にわたり獲得したとする金額から,金利を割り引いて現在価値に換算して決まる。1%を割り込む預金金利が長期化しているなかで,5%という民事法定金利が適用され,賠償金額は著しく実態とかけ離れているが,裁判では「法的安定及び統一的処理」の名分の下に退けられている。
著者は「現行の逸失利益算定方法は犠牲者にとって不合理,不公平ではないか」との疑問を提示し,その理由を地裁から高裁,最高裁へと展開する判例の詳細な検討を通して明らかにしつつ,それに代わる新たな方法を提案する。17年間に及ぶ著者の探求と知的誠実が結実した司法へのメッセージである。

このページのトップへ