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モンテーニュの哲学研究

モンテーニュの哲学研究
著者 清水 誠著
ジャンル 哲学・思想
出版年月日 2011/01/15
ISBN 9784862850980
判型・ページ数 A5・314ページ
定価 本体5,500円+税
在庫 在庫あり
 

目次

全体のためのプロローグ――フランス思想発祥の地,モンテーニュ城館への道

第Ⅰ部 モンテーニュ『随想録』の人文学的構造
第一章 モンテーニュの家族たち
サン=ミシェル教会について/モンテーニュの城館について/モンテーニュの塔について/梁桁上の『随想録』/相続をめぐる母子の相克とラテン語早期口頭教育の関係/モンテーニュの結婚観と妻の不倫との因縁
第二章 世界内存在として
前置き/五人の貴婦人たちとの関り/再び中庭(la coul)にて――男の友人たちとの付き合い方/モンテーニュとデカルト――デカルトの暫定道徳第一格率を巡って/モンテーニュとパスカル――法と力との関係について/デリダ『法の力』の読解/カール・バルトの反ナチ闘争/ボンヘッファーの反ナチ闘争/『法の力』から『友愛のポリティックス』へ/第一部エピローグ

第Ⅱ部 モンテーニュと自然神学の弁護
前置き
第一章 レーモン・スボンの自然神学
前置き/レーモン・スボンとは何者か/レーモン・スボン著,ミシェル・モンテーニュ訳『自然神学』の梗概
第二章 ミシェル・モンテーニュ著『レーモン・スボンの弁護』の分析
前置き/ミシェル・モンテーニュ著『レーモン・スボンの弁護』の分析/動物と人間と神/人間の知識のむなしさ。懐疑論の哲学史的優位。/懐疑論の最後の論拠。嘘つきのパラドックス(プセウドメニ)
第三章 トーマス・F・トーランスの自然神学

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内容説明

モンテーニュ(1533-92)の『随想録』を日常経験との繋がりで問うとともに哲学的鉱脈を探ることにより哲学史上に位置づけた画期的業績である。
第1部「随想録の人文学的構造」では,エセーの執筆された「モンテーニュの城館」を訪れた著者が,その内部を観察してモンテーニュの日常を想起しつつエセーを吟味し,モラリスト・モンテーニュの生活と思索を明らかにする。貴族になるために一族が払った努力を背景に,幼児期の教育や母との葛藤,妻の不倫問題や相続など家族間の微妙な陰影が分析され,また宗教戦争の時代に複雑な宮廷の権力関係の中で知恵と才覚を駆使して時代を生き抜く姿を,政治の動きを通して解明する。
第2部「自然神学の弁護」では,『随想録』107篇中で最大のエセー「レーモン・スボンの弁護」を考察する。宗教改革による啓示神学の隆盛に対し,理性による信仰の可能性を探究する自然神学には疑問がもたれた。著者は懐疑論者・モンテーニュの自然神学弁護が,デカルト,パスカルなど後世に与えた影響を分析し,さらに古典物理学から現代数学や量子力学に至る先端科学と神学の関係の可能性を考察,新たな問題を提起した。
本書は脱稿後,間もなくして逝去した著者の文字通り生涯の研究を集大成した遺言の書である。

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