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歴史と解釈学

《ベルリン精神》の系譜学

歴史と解釈学
著者 安酸 敏眞
ジャンル 哲学・思想
歴史
出版年月日 2012/08/15
ISBN 9784862851352
判型・ページ数 A5・608ページ
定価 本体8,500円+税
在庫 在庫あり
 

目次

はしがき
序章 《思想史》の概念と方法について
はじめに/Intellectual History, History of Ideas, History of Thought/Geistesgeschichte とIdeengeschichte/Kulturgeschichte とCultural History/従来のわが国の「思想史」議論の問題点/村岡典嗣の日本思想史研究/アウグスト・ベークの文献学/「史的文化学」の再検討/結論的考察
第一章 シュライアーマッハーにおける一般解釈学の構想
はじめに/シュライアーマッハーと解釈学/1809/10年の「第一草稿」と「一般解釈学」講義/文法的解釈と技術的解釈/「誤解を避ける技法」としての解釈学/予見的方法と比較的方法/シュライアーマッハーと歴史主義/シュライアーマッハー解釈学の意義と限界/むすびに
第二章 アウグスト・ベークと古典文献学
はじめに/アウグスト・ベークの人となり/ベークとベルリン大学/ベルリンにおける交友関係/ゴットフリート・ヘルマンとの論争/ベークの古典文献学の体系と構造/むすびに/付録 アウグスト・ベークの古典文献学の体系
第三章 アウグスト・ベークにおける解釈学と歴史主義
はじめに/ベーク文献学における解釈学の位置づけ/解釈学の意義とその課題/解釈学的循環の問題/「天分の同質性」と「予見」/解釈学と歴史主義の絡み合い/むすびに
第四章 ドロイゼンの《探究的理解》について
はじめに/歴史家ドロイゼンと彼の『史学論』/ドロイゼンの《探究的理解》の諸前提/ドロイゼンとフンボルト的探究の理想/ドロイゼンにおける《探究的理解》の実相/歴史解釈と歴史叙述との諸形式/《史学論》における歴史主義の契機/『史学論』の思想史的意義/むすびに
第五章 ディルタイにおける解釈学と歴史主義
はじめに/「歴史的理性批判」の試み/精神諸科学の基礎づけ/体験・表現・理解/生と解釈学/人間存在の歴史性/歴史主義のアポリア/むすびに
第六章 トレルチと《歴史主義》の問題
はじめに/トレルチの学問体系論/歴史と規範/トレルチと歴史主義の概念/トレルチの歴史研究の方法/トレルチにおける《追感的理解》/歴史主義の危機/「ヨーロッパ主義の普遍史」の理念/「現代的文化総合」の構想とその意図/歴史主義の内在的超越/むすびに
第七章 トレルチの《歴史主義》議論の波紋とその周辺
はじめに/《歴史主義》をめぐるトレルチとヴェーバーの学問的対立/プロテスタント神学者/哲学者・人文=社会科学者/歴史学者/むすびに
第八章 ニーバー兄弟と《エルンスト・トレルチの影》
はじめに/ニーバー兄弟の《タンデム》の軌跡/H・リチャード・ニーバーとトレルチおよび《歴史主義》の問題/ラインホールド・ニーバーとトレルチおよび《歴史主義》の問題/ラインホールドとリチャードの思想的相違点/むすびにかえて
終章 《ベルリン精神》と思想史研究
あとがき

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内容説明

著者はトレルチ研究から出発し,歴史主義のルーツを探るうちに解釈学の水脈に遭遇した。シュライアーマッハーからベーク,ドロイゼンを経てディルタイに流れる解釈学の系譜と,トレルチからディルタイ,ドロイゼンを通ってベークへと遡る歴史主義の系譜とが,いかなる関係にあり,いつどのように合流していったのか?
シュライアーマッハーの一般解釈学,ベークの古典文献学,ドロイゼンの史学論,ディルタイの精神諸科学と解釈学,トレルチの歴史哲学など,1810年に創設されたフンボルト大学哲学部にあって,5人の専門は異なるが一つの共通精神によって貫かれている〈ベルリン精神〉の系譜学という新たな視点から,解釈学と歴史主義をめぐる思想史的ドラマを,原典資料により克明に追跡した画期的業績である。
解釈学理論と歴史主義の結合が,歴史学の発展を促すと同時に,歴史相対主義がもたらされた。ディルタイは「確信のアナーキー」を嘆き,トレルチはベルリン着任時に「私は価値のアナーキーに終止符を打つために来た」と語り,相対主義克服のために心血を注いだが,道半ばにして逝った。1930年代以降,歴史主義は時代の後景に退いたが,今日においても主要課題であることに変わりはない。
他方,19世紀の解釈学は,ハイデガー,ガダマーによって批判され,等閑に伏されたままである。
著者は思想史研究の方法を根本的に反省し,19世紀の巨匠たちが残した業績に新たな光を当て,21世紀にとって〈歴史と解釈学〉の再検討が喫緊の課題であることを訴える。

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