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ケースブック 心理臨床の倫理と法

ケースブック 心理臨床の倫理と法
著者 松田 純 編集
江口 昌克 編集
正木 祐史 編集
ジャンル 哲学・思想 > 倫理
心理学
出版年月日 2009/03/30
ISBN 9784862850546
判型・ページ数 菊判・224ページ
定価 本体2,200円+税
在庫 在庫あり
 

目次

はじめに
Ⅰ 総論 心理臨床の倫理と法
 1.倫理とはなにか?
 2.倫理学と倫理理論
 3.必要な倫理原則
 4.生物医学倫理の四原則
 5.クライアントとの関係における四つの規則
 6.倫理的葛藤(モラルディレンマ)と意思決定のプロセス
 7.このテクストの使い方――マニュアル対応ではなく,倫理的な理由を考える

Ⅱ ケースの紹介と倫理的・法的問題のポイント

Ⅲ ケーススタディ編
 守秘とその限界
 ケース1 母親へのカルテ開示と説明責任
 ケース2 スクールカウンセラーの守秘義務と学校との連携
 ケース3 性的虐待
 ケース4 企業内カウンセラーのディレンマ
 ケース5 性犯罪被害者への支援
 ケース6 そう状態でクライアントが逮捕される
 ケース7 覚せい剤の使用が疑われる場合
 多重関係
 ケース8 クライアントとの恋愛関係
 価値観と自己決定
 ケース9 終末期の心理臨床
 ケース10 羊水検査を受けるかどうか
 研究倫理
 ケース11 事例発表・出版についての承諾

Ⅳ 資料編
 日本臨床心理士会倫理綱領
 法令・判例のインターネット検索





コラム
1 モラルディレンマとは/松田 純
2 原則主義への批判/松田 純
3 プロフェッションの法と倫理/藤本 亮
4 臨床心理専門職と生涯研修――日米の比較/田畑 治
5 「対人援助の倫理と法」を取り巻く文化――援助要請傾向の日米差が意味するものは/橋本 剛
6 多文化カウンセリング/小島孝子
7 面接記録(カルテ)の保管と持ち出しについて/早矢仕彩子
8 カウンセリングの料金/早矢仕彩子
9 スクールカウンセリング活動と学校/早矢仕彩子
10 オープンなスペースでのSCの活動/江口昌克・松田 純
11 スクールサイコロジスト養成プログラムにおける倫理・法教育――シカゴの場合/渡部敦子
12 事業場外スタッフ(EAPサービス機関等)における守秘の問題/江口昌克
13 米国におけるHIV陽性クライアントへの対応/江口昌克
14 HIV感染者への心理社会的支援について/江口昌克
15 希死念慮を持つクライアントへの対応/江口昌克
16 タラソフ判決の原則/磯田雄二郎
17 犯罪の予測可能性について/磯田雄二郎
18 覚せい剤についての対応/磯田雄二郎
19 多重関係と文化感受性/早矢仕彩子
20 転移・逆転移/早矢仕彩子
21 職能団体の倫理委員会/早矢仕彩子
22 終末期医療をめぐる動き/浜渦辰二
23 尊厳死とリビングウィルの法制化をめぐるアメリカとドイツの現状/浜渦辰二
24 専門家の説明モデルと病いのナラティヴ/南山浩二
25 出生前診断と選択的(人工妊娠)中絶/玉井真理子
26 胎児条項/玉井真理子
27 ロングフル・バース訴訟,ロングフル・ライフ訴訟/松田 純
28 研究の倫理/松田 純

法学レクチャー
1 刑事法上の秘密の保持/正木祐史
2 未成年者と親との関係/宮下修一
3 カルテの開示・説明と法的責任/宮下修一
4 児童虐待防止法について/正木祐史
5 性非行と少年法上の慮犯/正木祐史
6 犯罪被害者等基本法とそれに基づく支援施策/白井孝一
7 秘密保持についての民事責任について/宮下修一
8 犯罪の通報・捜査協力/正木祐史
9 少年事件の手続/正木祐史
10 未成年者に対する監督義務/宮下修一
11 事例を公表することによる守秘義務違反と,その民事責任/田中克志

薬学レクチャー
1 「死の病」から慢性疾患へ――抗HIV薬の開発/川村和美
2 ドラッグについて/川村和美

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内容説明

今日,さまざまな分野で倫理と倫理教育の重要性が叫ばれるが,何をどのように教えるか試行錯誤しているのが現状である。なかでも心理臨床の分野では倫理関係の基本文献がきわめて貧しい。
本企画は研究プロジェクト「対人援助(心理臨床とヒューマンケア)の倫理と法:その理論と教育プログラム開発」を基盤に,心理臨床,哲学,倫理学,法学,精神医学,社会心理学,社会福祉学,保険学,薬学などの専門家からなる学際的な取り組みによる,わが国ではじめての成果である。
心理臨床の現場では,クライアントから聴いた個人情報を第三者に漏らさない〈秘密保持〉が最も基本の原則である。しかしクライアントが強い自殺願望を表明し,その危険性が高い時,クライアントの生命の保護と秘密保持のどちらを優先すべきか,という倫理的葛藤に直面する。こうした場面で対応を誤ればクライアントや第三者に打撃を与え,重大な事態を招く怖れがある。それは倫理的責任にとどまらず,法的責任が問われる事態に発展することもある。
本書は倫理的法的問題にどう対処するかを,具体的ケースを通して紹介した格好のテキストである。

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