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人格

応用倫理学の基礎概念

人格
著者 ミヒャエル・クヴァンテ
後藤 弘志
ジャンル 哲学・思想
出版年月日 2013/12/20
ISBN 9784862851666
判型・ページ数 A5・360ページ
定価 本体4,800円+税
在庫 在庫あり
 

目次

凡例/はじめに/日本語版序文

第一章 序論
第一節 「人格」概念の用法
記述的用法と指令的用法/二つの機能
第二節 問題の限定
第三節 人格の同一性が複数存在する?
第四節 区別,二分法,修正?
第五節 本書の構成
第二章 人格性の条件
第一節 第一の根本問題:人格性の条件
第二節 出発点:「人格」概念の記述的‐分類的用法
人間,人格,生命への権利――三つの推論/「人格を成り立たせている特徴」の間接的な倫理的重要性
第三節 人格性の条件
第四節 人格性,パーソナリティ,人格の統一性
人格というあり方に含まれる二重の間時間的次元/人格というあり方に含まれる二重の社会的次元
第五節 結論
第三章 ジョン・ロックの提案
第一節 三つの哲学史的および体系的文脈
第二節 ジョン・ロックの提案
予備考察/ロックによる人格の統一性分析
第三節 リード,バトラー,ライプニッツ:同時代人からの批判
推移性の問題/循環問題/人格の実体としての自己意識
第四節 体系的観点における人格の統一性問題への橋渡し
第四章 人格の同一性に関する一人称‐単純説
第一節 一人称‐単純説の基本的アイディア
第二節 時間横断的自己帰属:記憶と予期
記憶と予期/一人称的自己言及の認識的特殊性/「私」という語の意味論的特殊性/必要な修正
第三節 人格の同一性に関する一人称‐単純説の解決不能な問題
二つの再反論/一人称的自己言及の空白
第四節 結論
第五章 人格の統一性
第一節 人格自体の統一性条件?
記憶基準と循環論法に対する反論の棄却/分裂問題とX―Yだけ原理の廃棄/人格の統一性の正しい基準を求めて
第二節 人格の統一性?
二つの難問/診断:二重の規定不足
第三節 懐疑的帰結:人格の統一性の条件は存在しない
第六章 人間の持続性:付論
第一節 生物学的アプローチの基本的アイディア
第二節 私は本質的に人間有機体なのか?
生物学的アプローチは,第一の根本問題に対する本書の解答と両立不能か?/私は本質的に人間有機体なのか?
3 人格‐人間:その存在論的関係
第七章 パーフィットによる挑発
第一節 パーフィットの挑発:「同一性は重要ではない!」
第二節 説明
人格の統一性への問いに対するパーフィットの解答/「重要である」の多様な意味
第三節 パーフィットへの反論:「同一性が重要だ!」
一般的反論/特殊的反論
第四節 以上の議論の成果
第八章 生活形態としてのパーソナリティ
第一節 全体的枠組み
一般的要素/特殊的要素
第二節 パーソナリティの構造
第三節 結論:パーソナリティの存在論的地位
第九章 自伝的一貫性
第一節 統一作業: 変様における一貫性
人間の尺度に沿ったパーソナリティ/人格の特別な倫理的地位の源泉としてのパーソナリティ
第二節 パーソナリティの同一性の条件としての自伝的一貫性の能動的実現
第三節 結論:われわれのパーソナリティの段階性と柔軟性
第十章 人間人格の統一性
第一節 持続性とパーソナリティの交差
第二節 復活:死を乗り越える存在
第三節 結論に代えて:未解決の諸問題

訳者あとがき
訳注/文献表/索引

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内容説明

本書は人格としての人間の生活ないし生命の形態を哲学的に再構築する試みである。それは同時に人間学的前提としての人間の世界?内?存在をも解明する。
その形態には,人間および人格という観点からのものと,社会的存在および自律的個人という観点からの二つの生活形態がある。ここでは人格の同一性という観点から人間であると同時に人格であるという問題を中心に考察する。人格の同一性という伝統的な問いについて,著者は人格概念を使って人間の通時的統一性の条件を確定するのではなく,純粋に生物学的に理解された人間有機体という概念と能動的・規範的自己関係の規準に依拠した独自の方法を提案する。
人格概念はヨーロッパの哲学・宗教の根幹をなし,現実生活においても法的権利・義務など多岐にわたり活用されている。従ってその考察には理論哲学・実践哲学から日常の社会政治的・法的・生命倫理的実践をも視野に入れた考察が要請される。
本書はヘーゲル研究や生命倫理学の領域の第一線で活躍している著者が,人格概念についてロックをはじめ多くの学説を批判的に整理した概説書であると同時に格好の哲学入門にもなっている。

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