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人格主義生命倫理学総論

諸々の基礎と生物医学倫理学

人格主義生命倫理学総論
著者 エリオ・スグレッチャ
秋葉 悦子
ジャンル 哲学・思想 > 生命倫理
出版年月日 2015/03/10
ISBN 9784862852069
判型・ページ数 菊判・464ページ
定価 本体8,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次

凡例/第4版序文(エリオ・スグレッチャ)/初版序文(アドリアーノ・バウソラ)

第1章 生命倫理学の起源,普及,定義
「新たな」考究としての生命倫理学の出現と用語の起源
世界における生命倫理学の主要なセンター
医学倫理学から生命倫理学へ
定義の問題
生命倫理学,人間学,学際性
第2章 生命倫理学の認識論的正当化,判断の基盤,研究方法論
生命倫理学の認識論的正当化
生物医科学と生命倫理学との関係
生命倫理学のモデルとメタ倫理学の問題
生命倫理学のモデル
可知論と不可知論――ヒュームの法則
記述倫理学と社会生物学モデル
主観主義あるいは急進的自由モデル
実用主義・功利主義モデル
社会契約論モデル
現象学モデル
原則の倫理学
人格主義モデル
生命倫理学における研究方法
道徳法と市民法
世俗的生命倫理学とカトリック生命倫理学
第3章 生命――形態,起源,意義
生命とその諸形態
生命と目的論
進化論に対する賛否
還元論に抗して
生物学の問題内部の哲学的問題
人間中心主義倫理学と反人間中心主義倫理学
第4章 人格と身体
医学の人間化
人格とその中心性
身体とその価値
二元論的または主知主義的概念
一元論的概念
人と身体性の人格主義的概念
人格の超越性
人格,健康,病気
健康と病気――簡潔な歴史的認識
古代
近代およびポスト・モダニズム時代
人の身体商品化とデフォルメ
第5章 生命倫理学とその原則
生としての,また科学としての倫理学
客観的道徳と主観的道徳
人の自由
自己実現としての自由
道徳的養成の必要性
規範,価値および自然法
「目的への手段」としての自然道徳法
「自然本性」と「理性」との本質的な一致
自然道徳法の認識
自然法は「生きている」
目的論的倫理学と義務論的倫理学
現代倫理学のパースペクティブ
人間学の沈黙
「超越的」の観念の歪曲
討議倫理学(ハーバーマス)
討議倫理学の前提
討議倫理学の性格
手続的理性
間主観性は普遍性の位置を占める
人格主義生命倫理学のいくつかの派生命題と原則
物理的生命保護の原則
自由と責任の原則
全体性の原則あるいは治療原則
社会性と補完性の原則
北米の生命倫理学の諸原則
諸々の衝突状況と衝突解消のための諸原則
第6章 生命倫理学と医学
医学の「複雑性」と倫理学の合流
科学としての医学と倫理学的要請
科学技術の誘惑
社会との衝突
環境的構成要素
医学の目的,限界,リスク
現実に対する尊敬
関係的な知としての医学
回復させる能力としての医学
治療における関係
「不可能な医学」
医師・患者関係
医師・患者関係の性質
医療行為の基礎
医師・患者関係のモデル
患者の善の意義
情報提供と同意の範囲と質
医師・患者関係における徳の回復
第7章 生命倫理委員会
なぜ生命倫理委員会か
生命倫理委員会の設置に不可欠の前提条件
医学的知と「医学」の行使の人間学的合一の再構成に向けて
準拠する基準と価値の問題
医学の政治化の克服――病者の諸権利と医師の諸権利
綿密な倫理学的判断のパラメーター
生命倫理委員会の機能と性格
生命倫理委員会に最適の性格
国際的な状況
アメリカ合衆国
オーストラリア
日本
欧州
イタリアにおける生命倫理委員会
結論と展望
ユネスコとその生命倫理委員会

訳者あとがき/文献一覧/人名索引/事項索引

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内容説明

今日の遺伝学の急速な発展や生物医科学の進歩など科学と科学技術の全能的ともいえる圧倒的な影響下で,人々の生命や営みの場は深刻な問題に直面している。本書はこの複雑な問いと困難を解決するために存在論的人格主義の立場から応えようとするものである。
著者は古典社会以来の施善の原則「殺すなかれ」が支配するヒポクラテスの思想から,ヒュームの倫理的自由主義における「自律の自由」にいたる歴史を辿りつつ,生命倫理学を「合理的認識論の立場より,生物学の知識と諸価値の体系的知識とを結び付ける新たな学問」と捉えて,生物学的,医学的データの記述に基づき,医療・介護の正当性を合理的に検討する。
実験科学,哲学的人間学,規範倫理学の視点からの明確な認識論と方法論によって,生命,人格と身体,生命倫理学の原則,生命倫理学と医学,そして生命倫理委員会の意義と世界の実情などの基本テーマを扱った体系的概説である。わが国の学界では米国の個人主義生命倫理学が優勢だが,医療・看護専門職の間では日常の臨床実務で人格主義生命倫理学が活用されている。スペイン語,ポルトガル語,フランス語,英語,ロシア語,アラビア語などに翻訳され世界的評価をえている本書は,研究,教育や医療現場の必携書となろう。

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