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中世における制度と知

中世における制度と知
著者 上智大学中世思想研究所
ジャンル 哲学・思想
哲学・思想 > 中世哲学
出版年月日 2016/03/25
ISBN 9784862852281
判型・ページ数 A5・296ページ
定価 本体5,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次

序文(佐藤直子)

一 伝統と改良の狭間で――アヴィセンナ以後のギリシャの学問教授の展開(三村太郎)
 はじめに
 一 トゥースィーの教育環境
 二 カマール・ディーンとギリシャの学問
 三 数学諸学の師トゥースィー
 おわりに

二 ビザンツにおける哲学と制度――ミハイル・プセロスへの塞がれた流れ(橋川裕之)
 一 哲学のための制度
 二 プセロス以前――コンスタンティヌス一世からコンスタンティノス七世まで
 三 プセロスの登場とその教育

三 十一世紀の修道制と知――カンタベリーのアンセルムス(矢内義顕)
 はじめに
 一 ベック修道院の創立とその修道院学校
 二 アンセルムスとベックの修道院学校
 三 Filiae Dulcissimae――アンセルムスと修道女たち
 結語

四 中世ドイツの女性による神秘主義――ビンゲンのヒルデガルトとマグデブルクのメヒティルト(エリザベート・ゴスマン)
 編集者序(佐藤直子)
 序
 一 女性による神秘主義の歴史的位置づけ
 二 ヒルデガルトの幻視
 三 メヒティルトの神秘主義
 結び

五 ペトルス・アベラルドゥスにおける制度と学知(永嶋哲也)
 はじめに
 一 大学成立以前の学問的営み――アベラルドゥスの教育活動
 二 方向付けられた自由学芸――カロリング期の学問論
 三 理念的にうけとられた自由学芸――アベラルドゥスの受け止め方
 四 結語に代えて

六 トマス・アクィナス『対異教徒大全』の意図と構造(山本芳久)
 序 問題意識
 一 宣教目的説の批判
 二 「至福(beatitudo)」についての論考の構造
 三 グレコ・アラブ的な知の伝統の批判的摂取
 結論

七 中世末期,脱大学の知識人――ニコラウス・クザーヌスを中心にして(八巻和彦)
 一 同時代におけるクザーヌスについての評価
 二 クザーヌスの大学への関わり
 三 クザーヌスとヴェンクの応酬
 四 ヴェンクによる講壇からのクザーヌス批判とクザーヌスによる真理探求の制度化批判
 五 Imitatio Socratis(ソクラテスに倣いて)
 六 クザーヌスにおけるソクラテス的理想像としてのイディオータ
 七 クザーヌスの大学批判が語りかけるもの

八 神のことがらが〈わかる〉――十字架のヨハネの「受動知性」論(鶴岡賀雄)
 一 大学と神秘主義
 二 近世スペインの状況と大学
 三 十字架のヨハネの大学生活
 四 「可能知性」の変転
 五 結論

執筆者紹介
索引

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内容説明

中世から近世における「知」の変容と「制度」との関わりを,ラテン中世を中心にビザンティン,イスラームをも視野に入れ考察する。中世の制度としての知は大学の成立と関わるが,大学以外にも思想形成の場があった。本書では知の制度を学校制度に限定せず,教授・教育の体制へと広げて考察すると共に,論理的思考を軸とする学知だけでなく,神秘思想で主題化される叡智をも視野に入れ,制度と知の影響関係を解明する。
イスラーム文化圏については,学問教授の状況と古代ギリシアを起源とする諸学問の発展を考察し,ビザンティンではアカデメイアの閉鎖(529年)以降,東ローマ帝国の哲学教育の実情を検討する。ラテン中世ではアンセルムスを通して修道院の知的活動を明らかにし,また制度の外の存在者であった12世紀の女性神秘家の,幻視体験から発する現状批判と刷新のメッセージを検討する。アベラルドゥスは自由学芸の言語に関わる三学を学知の基礎として神学を発展させたが,トマス『対異教徒大全』の叙述が神秘の次元に開かれた自然理性という理性観に基づくことを明らかにする。クザーヌスでは同時代の大学人が忘却していた愛知へと立ち戻って独自に思想展開した経緯を検討し,十字架のヨハネでは学知と神秘思想との関わりが解明される。

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