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中国古典時代の文書の世界

トルファン文書の整理と研究

中国古典時代の文書の世界
著者 西脇 常記
ジャンル 東洋学
出版年月日 2016/08/10
ISBN 9784862852397
判型・ページ数 菊判・410ページ
定価 本体9,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次

序文

 Ⅰ トルファン出土漢語大藏經の版本について

はじめに

第1章 トルファン文書とその硏究成果

第2章 トルファン出土漢語大藏經の槪觀
 1 大藏經版本の槪観
 2 數系統の大藏經とその斷片
  ⑴ 『開寶藏』と『高麗藏』
  ⑵ 『金藏』とその系列
  ⑶ 『契丹藏』
  ⑷ 江南地方で雕刻されたいくつかの大藏經
 3 トルファンへの版本流入と扉繪の流傳

 Ⅱ トルファン漢語文書の目錄と論集

第1章 「毛詩正義」寫本殘簡について――消えたベルリンの1殘簡と日本に傳世する7殘簡
 はじめに
 1 「毛詩正義」の寫本とその形態
 2 ドイツ學術調査隊將來「毛詩正義」寫本殘簡について
 3 ドイツ學術調査隊將來「毛詩正義」寫本殘簡の移錄と注記
 4 日本に傳世する「毛詩正義」寫本7殘簡について63
 5 日本に傳世する「毛詩正義」寫本殘簡の移寫と注記
 おわりに

第2章 靜嘉堂文庫藏漢語版本斷片について(附目錄)
 はじめに
 1 出自の問題
 2 トルファンに入った大藏經セットの問題
 3 契丹藏の扉繪の問題
 附 靜嘉堂文庫藏版本斷片目錄

第3章 ロシア・クロトコフ蒐集漢語版本について(附目錄)
 はじめに
 1 ロシア・コレクションの整理の一端
 2 クロトコフ蒐集品の出自
 附 クロトコフ蒐集漢語版本目錄

第4章 マンネルヘイム・コレクションについて(附目錄)
 はじめに
 1 マンネルヘイム・コレクションの蒐集地
 2 マンネルヘイム・コレクションの特徴─―時代・内容
 3 種々の斷片
  ⑴ 未傳佛典
  ⑵ 『佛說仁王護國般若波羅蜜經』寫本
  ⑶ 道敎關係
  ⑷ 世俗文書
 附 マンネルヘイム・コレクション漢語斷片目錄

第5章 金藏『大方便佛報恩經』は契丹藏か?
 はじめに
 1 現存する金藏『大方便佛報恩經』
 2 金藏『大方便佛報恩經』卷二の版式からの檢討
 3 金藏『大方便佛報恩經』卷二のテキストからの檢討
 おわりに

第6章 行琳集『釋敎最上乘祕密藏陀羅尼集』をめぐって
 はじめに
 1 房山石經と契丹大藏經(契丹藏)
 2 トルファン文書斷片に見える行琳集『釋敎最上乘祕密藏陀羅尼集』
 3 行琳「釋敎最上乘祕密藏陀羅尼集序」
 4 行琳集『釋敎最上乘祕密藏陀羅尼集』の傳承
 おわりに

第7章 一枚のウイグル文印刷佛典扉繪
 はじめに
 1 問題の所在(一)
 2 問題の所在(二)
 3 黨寶海氏說について
 4 中村健太郞氏の考え
 5 筆者の考え
 おわりに

 Ⅲ 雜纂

第1章 舍利――火葬の風景
 1 法門寺の佛舍利供養
 2 韓愈の上表文
 3 火葬の起源・ストゥーパの說話
 4 佛舍利信仰と說話
 5 火葬の受容
 6 高僧舍利信仰
 7 舍利信仰と禪
 8 韓愈と禪
 9 古典的儒敎の人閒觀
 10 近世中國の人閒觀

第2章 一人の日本人中國學硏究者から見たドイツの中國學
 はじめに
 1 ドイツ中國學と日本中國學の相違
 2 ドイツ中國學の足跡
 おわりに

第3章 私の過去と現在
 1 私の過去
 2 私の現在
  ⑴ 志磐撰『佛祖統紀』法運通塞志
  ⑵ ベルリン・トルファン文書の印刷斷片目錄
 最後に

あとがき
初出一覧
英文目次

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内容説明

20世紀初頭,1902年から14年の間に4回にわたり,ドイツ学術調査隊は中央アジアから多くの文物を将来した。その後ベルリンで始まった研究は,第二次世界大戦の破壊を受けつつも東ベルリンで続けられ,東西ドイツの統一後に著者をはじめ多くの研究者が参加して目録の作成など本格的な研究が展開された。それらの文書類は,漢語,ウイグル語,ソグド語,トカラ語,サンスクリットなどの文書を含むが,それを収集した場所からトルファン文書と呼ばれ,本書では漢字文書を中心に考察される。

「Ⅰ トルファン出土漢語大蔵経の版本について」では,山西省仏宮寺の釈迦像の胎内から発見された契丹大蔵経の発見により,版本大蔵経の新たな事実が明かされる。

「Ⅱ トルファン漢語文書の目録と論集」では,「毛詩正義」写本残巻をはじめ静嘉堂文庫蔵漢語版本断片,ロシア・クロトコフ蒐集漢語版本,マンネルヘイム・コレクション,一枚のウイグル文印刷仏典扉絵など各地のコレクションの目録の作成や漢字文書以外の資料も活用してトルファン文書の実態を解明する。

「Ⅲ 雑纂」では,仏教の火葬が中国の土葬の習俗にどう浸透したか。またドイツ中国学の紹介,中国哲学史専攻の著者の研究を振り返り,中国学の現在を展望する。

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