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プロティノスの認識論

一なるものからの分化・展開

プロティノスの認識論
著者 岡野 利津子
ジャンル 哲学・思想
出版年月日 2008/10/15
ISBN 9784862850416
判型・ページ数 菊判・224ページ
定価 本体4,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次

序 論

第1章 一者の不可知性と非存在性
万物の始原は多様性を超えている/一者は無限定,無形相で,存在を超えている/一者は本来名付けられない/一者の一性とは無限性である/一者は知性を超えている/一者は不可知である/一者体験/一者の内在性と超越性/一者からの発出/〈二つの働き〉の教義

第2章 ヌースの作用による叡智界の形成
第一節 ヌースにおける無限定性
第二節 〈未完のヌース〉の教義
第三節 「恋するヌース」(Ⅵ7[38]35)
 結 論

第3章 一者からのヌースの発出
第一節 問題点
第二節 これまでの解釈
第三節 〈二つの活動〉の教義再考
第四節 問題の解決
 結 論

第4章 一なるものからの展開としての認識
第一節 真理か臆見か
第二節 ヌースは一者の内から一者を見る
第三節 ヌースからの魂の生成
第四節 未分の原理からの展開
第五節 外界認識と反省的認識
第六節 内在的超越論
結 論

第5章 一者との合一と真理認識
第一節 合一体験
第二節 〈合一体験〉の対象化
 結 論

結 論

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内容説明

ギリシア哲学最後の学派新プラトン主義は,西洋古代哲学の綜合・完成ともいうべき独自の哲学体系を形成した。その基本的な論理体系を生み出したのがその創始者プロティノス(205-270)であった。
彼の思想形成には一者体験が決定的な役割を果たした。プロティノスはその経験に極めて理論的で独創的な説明を与えたが,本書では認識という観点からプロティノス哲学の解明を試みる。
プロティノスは最高原理としての一者が,存在と認識とを超越したものであり,認識を超えた領域(一者)から認識が成立する過程を通して,一者,ヌース(叡智界),魂(感性界)の発出論的な展開を論ずる。一者から発出し一者を原因とする直知と存在は,ヌースとして一体をなしており,一者からヌースが生じる際に同時に成立する。同様にヌースから魂も形成される。存在でも知でもない一者が存在と知の原因だという彼の思想は,主客二元論を超えて,合理を超えたものの合理化を可能にし,哲学的・宗教的に計り知れない意義があり,ここから人間存在の本質に関する多くの示唆が読み取れる。我々が一者やヌースとの合一経験を通して,それを意識作用に即して考究するとき,我々自身の内面の問題として現れてくる。これがプロティノスの根本的主張に他ならない。

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