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振り向きざまのリアル

哲学・倫理学エッセイ集

振り向きざまのリアル
著者 土橋 茂樹
ジャンル 哲学・思想
出版年月日 2022/07/30
ISBN 9784862853677
判型・ページ数 4-6・356ページ
定価 本体3,200円+税
在庫 在庫あり
 

目次

はじめに――振り向きざまのリアル

第Ⅰ部 哲学の余徳

1 哲学の奇妙な効用
 秘められた老化との葛藤
 連鎖式のパラドクスとハゲ頭
 他人の痛み
 現実と虚構の相互侵犯

2 古(いにしえ)の東西文化交流
 借り物の哲学
 アレクサンドロス大王の東征の影響
 キリスト教と真言密教
 『さまよえる猶太人』
 イエズス会日本コレジヨの『講義要綱』

3 哲学はちょっとアブナイ(?)
 『審判』
 人間は動物とどこが違うか?
 神性と獣性の間の空隙としての人間
 祭りごと(=政)としての政治の変容
 哲学の使命

4 人は見かけによらない?――古代ギリシアにおける観相の術と情念論をめぐって
 観相学
 情念からの脱却か,それとも適度な情念か
 結び――神性と獣性の間で

5 我々はどこから来たのか
 神語りと自然語り
 現代の宇宙物理学的世界観の限界
 結び――偶然か神秘か

6 「神を見る」ということ――大森正樹著『エネルゲイアと光の神学』を読んで

第Ⅱ部 災禍からの再生に向けてリスクを分かち合う倫理

7 地球化時代の正義とは――『共生と平和への道』を読んで
 迫り来る闇に抗して
 復讐せよ,されど心は汚すな
 赦しと共生に向けて

8 九・一一以降のハムレット
 削除されたフォーティンブラス
 フォーティンブラスと機関銃
 ミュージシャン・ハムレット
 舞台を汚せ!
 復讐せよ,されど心は汚すな

9 映画『沈黙』を観て
 『沈黙』の背景としてのキリシタン史
 神の沈黙
 かくれキリシタン

10 リスクを分かち合う倫理
 市場の倫理・統治の倫理
 自由主義と共同体主義,そして二大政党制
 リスク社会
 不知の知
 規範倫理学の再生

11 カントの徳理論と徳倫理学の諸相
 徳概念をめぐる変容史概観
 アンスコム以降の徳倫理学をめぐる状況
 カント的徳理論と徳倫理学をめぐる一考察

12 わがストーマ体験記
 「ストーマ=人工肛門」入門講座 構造編
 ストーマ入門講座 実践編
 人工肛門って障害なの?

第Ⅲ部 とりとめのない余談

13 「顔なし」と「坊」のサブストーリー――「千と千尋の神隠し」を観て

14 デイヴィッドはモニカを愛したのか――映画「A・I」を観て
 デイヴィッドはモニカを愛したのか

15 「三方一両損」は円満解決か?
 「三方一両損」
 「文七元結」
 「三方一両損」的解決への疑いの勧め

16 古今亭志ん朝師匠を偲ぶ

17 談志と「らくだ」

18 操作する生・操作される生
 悲劇に潜む操作
 意図せざる情報操作――歴史の場合
 生物進化の操作

19 ブランチ(「欲望という名の電車」)とウィトゲンシュタイン

20 「三人姉妹」を追放されしトゥーゼンバフの物語

21 句集『眠るまで』を読んで

22 荒川洋治『詩とことば』を読んで

23 〈価値語〉論の一つのアプローチ
 本章の目論見
 原初的価値経験
 顕在的価値語と超越論的価値語
 ひとまずの結び

附録 書評:Roland Betancourt, Sight, Touch, and Imagination in Byzantium.

あとがき
初出一覧
索引

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内容説明

振り向いた瞬間,人は日常の風景とは違ったものに出合う。本書は普段は気付かずに見すごしていることを,身近な素材をとおして,そこにひそんでいる意味を見事に引き出してみせる。これらの良質で機知に富んだエッセイは,楽しみながら精神の滋養になるだろう。
「哲学する」とは何か? ここでは知識としての哲学ではなく,生きるための哲学について考える。ギリシアや教父の哲学に精通し,豊かな教育経験を踏まえた著者の含蓄あることばは,多くの刺激と気づきに満ちている。
身近にあるリスクや情念,神性と人性と獣性,母と幼児の交流,東西文化,そして私たちは何処から来たのか,さらに映画や演劇,文学,落語の世界に羽ばたく著者の旺盛な関心は,個別の事柄への探究とともに,人間とは何かという興味と人間への愛情に触発されて,読者は吾知れず立ち止まって考えている自分を見出すだろう。
「大哲学者が命を落とす時代ではなく,多くの市民哲学愛好家たちが人間として連帯できる時代」になったと,著者は哲学の社会的使命を訴える。哲学を専門家の独占物ではなく広く市民の手に取り戻すことが求められている。
先端的な技術,急速な情報化による知識の断片化,情動的なポピュリズムの勢い,さらにグローバル化による世界の拡張と複雑化,そして何よりも地球環境問題に向きあうために,今,哲学が試され,哲学復活の時代を迎えている。

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