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ことばが紡ぎ出されるとき  新刊

声とテクストのあいだ

ことばが紡ぎ出されるとき
著者 岩波 敦子
ジャンル 歴史 > ヨーロッパ中世史
出版年月日 2026/02/10
ISBN 9784862854544
判型・ページ数 菊判・284ページ
定価 本体3,500円+税
在庫 在庫あり
 

目次

はじめに(岩波敦子)


第Ⅰ部 声の刻印とことば

 1 声と風と聖霊――中世における聖霊論の一側面(山内志朗)
  1 聖霊と声
  2 中世哲学の中での聖霊
  3 愛の発出と聖霊の発出
  4 聖霊における共有と交通
  5 聖霊と語り
  参考文献

 2 声の刻印――E. バンヴェニストの言語思想における声とエクリチュールの接近(小野 文)
  前置き
  1 孤立したメモの謎
  2 一回きりの出来事
  3 メモの特異性
  4 *bhā-「話す」の非=メッセージ性と表出性
  5 発話者の主体性
  結論に代えて――エクリチュールへの接近


第Ⅱ部 神の語りかけとテクスト/表象

 3 ペルソナ間で対話する神――神-劇(Theo-drama)における旧約文書の活喩法的読解(土橋茂樹)
  1 「神-劇」(Theo-drama)を介した神理解
  2 旧約と新約の相関に基づく聖書解釈法
  3 旧約文書の「活喩法」的読解
  結びに代えて

 4 遍在する神の声――イスラーム圏の美術・建築を飾るコーランからの銘文(鎌田由美子)
  はじめに
  1 イスラーム美術とは何か
  2 コーランの特徴
  3 書くことの重要性
  4 コーランから採られた銘文
  5 お守りとしてのコーラン
  6 声の文化と文字の文化
  7 他の文化圏との比較
  おわりに


第Ⅲ部 教え導くことばとテクスト

 5 アビンドンのエドマンド『教会の鏡』における読者層――活動的生活と観想的生活をめぐって(松田隆美)
  1 『教会の鏡』の諸ヴァージョン
  2 活動的生活,観想的生活,「ヴィタ・ミクスタ」
  3 二つの生活と現世蔑視
  4 カテキズムをめぐる変容
  5 黙想から観想へ

 6 錯綜する声とテクスト――15世紀イタリアの説教記録から(大黒俊二)
  1 はじめに――「錯綜する声とテクスト」とは?
  2 1451年パドヴァ四旬節説教
  3 1481年フィレンツェ四旬節説教
  4 「大罪を犯した状態でなされた善行は救済に役立つか」
  5 活字で読む説教――印刷術
  6 おわりに――「錯綜する声とテクスト」の歴史性

 7 聖女伝を書く説教師――トマ・ド・カンタンプレ(1201–72頃)の声をめぐって(後藤里菜)
  はじめに
  1 トマ・ド・カンタンプレについて
  2 トマ・ド・カンタンプレとヴィトリのヤコブス
  3 男性著者の声,聖女の声
  4 アイヴィエールのルトガルドの伝記にみるトマの声
  おわりに

 8 神学者レジナルド・ピーコックとテクストの声(井口 篤)
  1 語りの両義性
  2 レジナルド・ピーコックと語り
  3 信仰と語り
  4 語りの両義性と「底本」としての書物


第Ⅳ部 響き合うことばと儀礼

 9 世界秩序と皇帝理念をよみがえらせる歓呼の記録――10世紀ビザンツ宮廷儀礼に見える「帝国」と諸民族(大月康弘)
  はじめに
  1 コンスタンティノス7世と『儀礼について』
  2 儀礼と「声」
  3 テキストが伝える「声」
  4 儀礼における「声」の役割
  5 テキストの裏面を読む
  おわりに

 10 信じることば,裏切ることば――中世ヨーロッパの挙証することば(岩波敦子)
  1 ことばの交渉力
  2 疑いを晴らすことば
  3 誓いの回避と代理宣誓
  4 誓いからの解放
  5 挙証することばとこころの意図
  6 偽りのことばの報いと償い
  7 声とテクストの攻防――ギルベルトゥス・ポレタヌスの弾劾手続き
  8 真実を封じ込めることば
  9 聖性を帯びることば
  10 挙証することばと身体
  結びにかえて――ことばを信じる社会

あとがき(岩波敦子)
索引
執筆者紹介

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内容説明

「ことば」とは何か。「ことば」は単なる情報伝達の手段ではなく,身体に根ざし,時間の中で生成・消滅し,記憶と集団的連帯を形づくる。語られる声の刹那性と,テクストによる固定化・反復可能性との緊張関係をはらみ,我々の意識に刻まれ,魂の在り方に深く関わる。
本書は,哲学,神学,文学,歴史学,言語学,美術史など分野横断的な知を結集し,古典古代から現代に至るヨーロッパ,イスラーム,ビザンツ世界を中心に,ことばが文化の諸形態において果たしてきた創造的営為を,多角的な視座から検討する共同研究の成果である。
第Ⅰ部では,聖霊論や言語思想を通じて,声が時間的世界に刻印される在り方と,神的なものを伝達する思想的可能性を探究する。第Ⅱ部では,神の語りかけと応答をめぐる聖書解釈やイスラーム美術の銘文を扱い,神と人をつなぐメディアについて論じる。第Ⅲ部では,説教や教化文学を取り上げ,声とテクストが錯綜しながら人々を教え導く言語行為の歴史的展開を描き出す。第Ⅳ部では,儀礼や誓いにおける身体化されたことばが,社会的秩序と紐帯を現前化する力を有していたことを明らかにし,ことばの呪縛力をも考察する。
テクスト論,認識論,表象論,思想史,文化史など多元的なアプローチによる10章の論稿は,有機的に連関し,互いに響き合いながら,ことばの身体性・社会性・歴史性を解き明かしていく。言語文化研究に新たな地平を拓く,刺激に満ちた一冊である。

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