ホーム > ヨーロッパ中世の時間意識

ヨーロッパ中世の時間意識

ヨーロッパ中世の時間意識
著者 甚野 尚志
益田 朋幸
ジャンル 歴史 > ヨーロッパ中世史
出版年月日 2012/05/20
ISBN 9784862851338
判型・ページ数 菊判・394ページ
定価 本体6,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次



第Ⅰ部 社会のなかの時間
1 ビザンツ人の終末論――古代末期における世界年代記と同時代認識(大月康弘)
2 12世紀の歴史記述――ハーフェルベルクのアンセルムスと終末論的歴史(甚野尚志)
3 中世イベリア半島で使用された暦について(黒田祐我)
4 「時」の人フィチーノとコペルニクス――暦・太陽・黄金時代(根占献一)
5 良心の問題か現実の必要か――改暦紛争の神聖ローマ帝国(皆川 卓)

第Ⅱ部 テクストの時間意識
1 音楽と時間意識――カロリング時代の音楽書にみられるリズムとテンポ(西間木真)
2 人生の四時期――オジル・デ・カダルスとフィリップ・ド・ノヴァールの場合(瀬戸直彦)
3 ドイツ神秘思想における時間把握――マイスター・エックハルトの瞬間論(田島照久)
4 『アラス受難劇』およびグレバン作『受難の聖史劇』における「第一日目」――内容構成と韻文構造の比較(黒岩 卓)

第Ⅲ部 図像のなかの時間
1 「物語の道筋」を歩く――その Text, Motion, Visuality(辻 成史)
2 10世紀イベリア半島の写本挿絵に見られる時間意識――ミレナリスムは存在したのか(毛塚実江子)
3 アナスタシス(キリストの冥府降下)図像に内在する時間(櫻井夕里子)
4 神の足が立つところ――磔刑図像に描かれた礼拝者たちとその時間構造(辻絵理子)
5 ビザンティン聖堂装飾のイコンとナラティヴ(益田朋幸)
6 中世ヨーロッパの写本挿絵における時代表現と写実性(堀越宏一)

このページのトップへ

内容説明

ヨーロッパ中世とルネサンスの社会,文化,芸術の諸相を,歴史学,美術史,哲学,文学,宗教学など多分野から横断的に共同研究することを目的とした,早稲田大学「ヨーロッパ中世・ルネサンス研究所」による研究成果である。学際的な協力がなければ研究成果が期待できないテーマの中から,未だ充分な研究がない「中世の時間意識」を選び,15名の研究者が「社会のなかの時間」「テクストの時間意識」「図像のなかの時間」の三つの視点から考察した。
自身や周囲の人々の誕生から死を通して不可逆的な時間を感じるとともに,昼夜や星の動き,月の満ち欠け,四季の変化など繰り返される時間を通して時間意識は形成される。不可逆的で直線的な時間意識と繰り返し再生する時間意識は,あらゆる文明の文芸や芸術の時間表現に見られる。
ヨーロッパではキリスト教が古代的な時間意識をどのように変容させたかが重要な問題である。ヨーロッパ世界がキリスト教化するにつれ,古代の時間意識はキリスト教の時間意識と融合し継承されていく。中世ではキリスト教会の影響下,古代における一年の暦は聖人の祝祭中心の暦に変えられ,また教会の暦は古代的な循環する自然の意識を受け継いだ。クリスマスが冬至の祭り,聖ヨハネの祝日が夏至の祭りの日に設定されたように,教会の暦は,以前の異教世界の時間意識を土台として作られていた。
本書は前近代世界の社会や文化の深層を理解するため,現実の社会の時間意識と,文学,哲学,芸術作品で表現された時間意識を多様な角度から分析した意欲的試みである。

このページのトップへ