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トマス・アクィナスのエッセ研究

トマス・アクィナスのエッセ研究
著者 長倉 久子
ジャンル 哲学・思想 > 中世哲学
出版年月日 2009/06/30
ISBN 9784862850621
判型・ページ数 菊判・324ページ
定価 本体5,500円+税
在庫 在庫あり
 

目次

1 トマス・アクィナスにおける神の像なる人間について
神と世界/神の跡/神の像/神の像なる人間/神の像なる人間の完全性/神の像なる人間の完全性の達成/むすび

2 トマスの創造論――ボナヴェントゥラの創造論に対するトマスの批判
創造とは何か/創造と時ないし世界の永遠性の問題

3 トマスにおける実在と言葉――言語の分析より ESSE の意味へ
EST に向かって(日常言語の分析,esseとessentiaの実在的区別,ESSEの超越性)/述語行為とESSE(再び日常言語へ,言語の背後にあるもの,結び:述語し断定する行為(praedicatio)において露わとなるesse)

4 〈だ〉そのものなる神――〈絶対無〉と〈存在〉を超えて
はじめに/トマスにおける〈神〉という問題/〈ある〉(EST)を目指して/〈絶対無〉と〈だ〉

5 ESSENTIA-ESSE-ENS――エッセと日本語(1)
はじめに/エンスからの出発/エンスの多義性/本性ないし本質を意味表示するエンス/エッセンチアないしエンスの現実態としてのエッセ(伝統的意味でのエッセ)/アンセルムスとボナヴェントゥラにおけるエッセ/伝統的エッセと二つのエッセンチア(トマスの分析)/二つのエッセンチアの現実態としてのエッセ

6 生成する自然の究極的根拠を求めて――エッセと日本語(2-1)
はじめに/エンス・エッセ・エッセンチア/生成変化の分析からの出発/働きとしての自然の原因を求めて

7 自然の形而上学的分析から言語の分析へ――エッセと日本語(2-2)
はじめに/自然の分析から言語の分析へ/同と異/言葉の使用様式あるいは三つの述語様式/言葉のratioと実在のratio/エンスのアナロギア/形相が質料に与えるエッセ

8 具体性のエッセンチアに向かって――エッセと日本語(3-1)
はじめに/ensとessentia/複合実体におけるessentia/個と個別なるもの:signatioとdesignatio/類・種・個/実体的形相の一性/分類・命名・述語/分類の〈言葉〉と実在の〈言葉〉/essentiaとnatura:分類の二つの図式/全体としての形相と全体としてのessentia

付1 LE PROBL?ME DU LANGAGE DANS LA TH?OLOGIE DE L'IMAGE DE DIEU CHEZ SAINT BONAVENTURE ET SAINT THOMAS
QUI EST L'HOMME?

付2 LE PROBLEME DE ESSE/ESSENTIA DANS LE COMMENTAIRE DE SAINT THOMAS IN PERIHERMENEIAS
LA LANGUE QUE THOMAS ANALYSE/INTERPRETATIONES/NOMINA ET VERBA/PRAEDICATIO/HOC VERBUM QUOD EST ESSE/COMPOSITIO EXPLICITEE DANS UN ENONCE

付3 DIEU, N?ANT ABSOLU OU IPSUM ESSE
AVANT-PROPOS/N?ANT ABSOLU OU IPSUM ESSE

著者あとがき/編者あとがき/初出一覧/略年譜/業績一覧/文献表/索引(人名・事項・出典)

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内容説明

トマス思想の中心的な概念であるエッセについては膨大な先行研究が存在するが,本書は独自の視角からエッセにアプローチした意欲的作品である。
エッセ研究の困難は,トマスがesseという言葉の重要性を語りながらも,その意味について明瞭には語らなかったことと,また常に同じ意味で用いているとは限らなかったことにある。
著者はトマスの最初期の作品『有と本質について』から最晩年の『命題論註解』に至るまでのトマスのエッセに対する立場は,必ずしも一貫したものではないとする。トマスのエッセ理解は新プラトン主義的なものからアリストテレス的エッセへ,そして独自のエッセへと変わっていった。とくに『形而上学註解』にはその意図が明確に読み取れる。
著者はトマスの論述を日本語文脈に変換することにより,その真意がいっそう明確になることを見出し,〈エッセと日本語〉という視点から考察を重ねたが,全体的な見通しをとりつつも道半ばにして未完に終わった。ボナヴェントゥラとの比較を意識して考察された本書は,著者の40年に及ぶトマス研究の集大成でありライフワークとなった。

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