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トマス・アクィナスの知恵

トマス・アクィナスの知恵
著者 稲垣 良典
ジャンル 哲学・思想 > 中世哲学
出版年月日 2015/06/25
ISBN 9784862852106
判型・ページ数 4-6・216ページ
定価 本体2,800円+税
在庫 在庫あり
 

目次

はじめに

Ⅰ 知恵の探求
1 探求の勧め(『対異教徒大全』I.2.1)
2 知恵の探求と幸福の追求(『神学大全』II-I.3.5)
3 知恵の卓越性(『神学大全』II-I.66.5)
4 知恵の探求と信仰(『対異教徒大全』I.5)
Ⅱ 神とは何か知と不知
1 人間本性に植えつけられている神の認識(『神学大全』I.2.1.ad1)
2 自然理性による神認識(『神学大全』I.12.12)
3 不可知なる神(『ボエティウス・三位一体論註解』1.2.ad1,『福者ディオニシウス・神名論註解』7.4,『定期討論集・神の能力について』7.5.ad14)
Ⅲ 創造について
1 「創造」とは何か(『神学大全』I.45.3)
2 なぜ神は万物を創造したのか(『神学大全』I.32.1. ad3)
Ⅳ トマスと天使
1 天使は実在する(『神学大全』I. 50. 1)
2 守護の天使(『神学大全』I. 113. 2)
Ⅴ 自己知と自己愛
1 自己認識について(『神学大全』I.87.1)
2 愛徳(カリタス)としての自己愛(『神学大全』II-II.25.4)
3 自己愛と神愛(A)(『任意討論集』I.4.3)
4 自己愛と神愛(B)(『神学大全』II-II.26.3)
5 自己愛と隣人愛(『神学大全』II-II. 26.4)
Ⅵ 幸福について
1 人間の究極目的(『神学大全』II-I.1.7)
2 人間は幸福でありうるか(『神学大全』II-I.5.1; 5.3)
3 万人が幸福を欲するか(『神学大全』II-I.5.8)
Ⅶ 人間の自由について
1 人間は自由であるか(『神学大全』I.83.1)
2 悪を選択する自由(『真理について』XXII.6)
3 意志と神(『神学大全』II-I.10.4)
4 恩寵と自由意思(『神学大全』II-I.113.3)
Ⅷ トマスと政治
1 最善の政治形態(『神学大全』II-I.105.1)
2 「人は人にとって友である」(『対異教徒大全』III.117)
Ⅸ トマスのユーモア
1 真理と酒と帝王と女(『自由討論集』XII.14.1)
2 聖体の秘跡とねずみ(『神学大全』III.80.3.ad3)

あとがき/索引

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内容説明

『神学大全』の訳業をはじめ多くのトマス研究を世に問うてきたわが国を代表するトマス学者が,あらためてトマスの知恵の探求を考察し,その全体像を分かりやすく読み解く。
トマスは感覚で捉えられる自然・物体的事物の領域(現代の科学が研究領域としているもの)に関しては人間理性の自律を確立したが,知恵の探求が主として関わる人間精神(自己)と神の認識に関しては,信仰の光によって導かれると強調した。知的探求の領域を,人間理性だけでは十分に探求できない領域にまで拡大し,探求を徹底化して存在の真実に迫ったのである。
近現代思想は信仰と理性を分離し,経験的認識の可能な「自然」のみを実在と認めて「超自然」を知的探求から排除したが,それは信仰からの理性の解放ではなく,むしろ人間の「自我」への閉じこもりと理性の矮少化に他ならない。本書は現代の思想状況を念頭に置きながら,トマスとの対話を通して,その豊かな知恵の可能性を明らかにした,格好のトマス入門である。

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