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知と存在の新体系

知と存在の新体系
著者 村上 勝三
ジャンル 哲学・思想
出版年月日 2017/11/30
ISBN 9784862852649
判型・ページ数 A5・392ページ
定価 本体6,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次

凡例
序 自我論的道程から宇宙論的見地へ

 第Ⅰ部 「存在論」の歴史――スアレスからヴォルフへ

第一章 理由の系列としての哲学史
 第一節 哲学史と現代
 第二節 哲学史研究の特質
 第三節 哲学史の往復
 第四節 四つの先入見

第二章 スアレスと形而上学
 第一節 「形而上学」という名称の広がり
 第二節 「形而上学の対象」
 第三節 「理拠的存在」

第三章 一七世紀の「形而上学」
 第一節 エウスタキウスの「形而上学」
 第二節 デュプレックスの「形而上学」

第四章 一七世紀「存在論」の流れ
 第一節 ゴクレニウスの「オントロジア」
 第二節 クラウベルクの「オントソフィア」

第五章 クリスチャン・ヴォルフの存在論
 第一節 「第一哲学」の特質
 第二節 存在論の第一原理
 第三節 存在についての基礎概念

第六章 デカルト哲学と形而上学
 第一節 「形而上学」と「第一哲学」
 第二節 「形而上学」と「抽象」
 第三節 「ある」と「知る」
 第四節 デカルト形而上学の革新性

 第Ⅱ部 存在と言語

 はじめに

第一章 翻訳可能性と翻訳非決定性
 第一節 「ある」と国語
 第二節 国語の多様性と共通性
 第三節 存在問題と翻訳

第二章 根源的翻訳と自然主義的解決
 第一節 経験主義から自然主義へ
 第二節 根源的翻訳
 第三節 自然主義批判(一)
 第四節 自然主義批判(二)
 第五節 心理主義的解決――私的言語の不可能性

第三章 翻訳可能性の条件
 第一節 翻訳の場としての思考の超越論的機構
 第二節 翻訳が可能な条件としての経験の共有――自然主義批判(三)
 第三節 翻訳可能性の二つの条件
 第四節 「存在」について論じるということ

第四章 「実在は述語であるのか」
 第一節 「ある」という語の働き
 第二節 述語は属性を示すが,実在は属性ではない
 第三節 実在言明は余計なことをしているのか
 第四節 心的実在をもつとされる存在

第五章 さまざまな実在
 第一節 トマス・アクィナスという迂回
 第二節 実在は完全性ではない
 第三節 必然的実在は完全性である
 第四節 「神」概念の可能性と世界把握
 第五節 カントから現代分析哲学へ

 第Ⅲ部 存在論的証明を遡行する

 はじめに

第一章 「存在論的証明」とはどのような問題か――カント
 第一節 「最も実象的な存在」と「必然的存在」
 第二節 原級と最上級
 第三節 神と世界
 第四節 太陽か北風か

第二章 実在と制度――ヒューム
 第一節 「必然的存在」を遡る
 第二節 神不在の根拠
 第三節 知の共同体

第三章 「可能的存在」と理由――ライプニッツ
 第一節 「自分からの存在 ens a se」
 第二節 「必然的存在」の可能性
 第三節 ア・プリオリな証明とア・ポステリオリな証明の順序
 第四節 完全性の強度から実在へ
 第五節 「最も可能な存在」と実在
 第六節 感覚可能性と完全性
 第七節 完全性と必然的実在

第四章 デカルトから遡る
 第一節 「自分による per se」と「自分から a se」
 第二節 「自分による」
 第三節 「自分から」
 第四節 「自分から」と「自己原因」

第五章 トマスのアンセルムス批判
 第一節 『命題論集講解』
 第二節 『真理について』
 第三節 『反異教徒大全』
 第四節 『神学大全』

第六章 アンセルムスの証明
 第一節 『真理について』
 第二節 『グラマティコスについて』
 第三節 『モノロギオン』
 第四節 『プロスロギオン』

 第Ⅳ部 形而上学から道徳へ――自我論的道程と宇宙論的見地の統合

 はじめに

第一章 自我論的道程から超越を経て宇宙論的見地へ
 第一節 経験主義的認識理論の転倒
 第二節「知ることからあることへ」

第二章 宇宙論的見地と存在の度合い
 第一節 「実在する」は述語であるのか
 第二節 「必然的実在」という概念

第三章 形而上学と道徳
 第一節 自我論的道程における個体倫理の基礎
 第二節 痛みの物理学
 第三節 社会的存在である人の感情

あとがき
文献表
索引

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内容説明

現代の哲学的状況は底なしの相対主義と自然主義による閉塞的状況に陥っている。本書はそこからの脱却を目指す。アリストテレス=トマス・アクィナスは始まりを「ある」に置いたが,著者はもう一つの始原,「知ること」を設定し「知ることからあることへ」の思考を切り拓く。そして知るものである「私」の思いを探究していくことで「私」を超えて一なる場としての「無限」を見出し「我々」と「私」の結びつきが示される。

第Ⅰ部「「存在論」の歴史」。スアレスからヴォルフまでの「存在」に関する思想展開を辿ることで,形而上学の流れと存在論の流れを描き出し,その上でデカルト形而上学の真の革新性を示す。

第Ⅱ部「存在と言語」。現代分析哲学における「存在論的証明」の巡る論争の検討を通して,分析哲学において「存在」問題を問うことの困難さを示す。

第Ⅲ部「存在論的証明を遡行する」。カント,ヒュームからライプニッツ,デカルトへ,さらにスコトゥス,トマス,アンセルムスへと遡って存在論的証明の「遡行的」哲学史研究を試みる。

第Ⅳ部「形而上学から道徳へ」。デカルト形而上学の刷新により見出された,自我的道程から超越を経て宇宙的見地へ至り,個人倫理から社会倫理へ展開する新体系を提示,半世紀に及ぶ著者の哲学研究の到達点。

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