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フッサール現象学批判  新刊

他人と私の間

フッサール現象学批判
著者 村上 勝三
ジャンル 哲学・思想
出版年月日 2025/07/10
ISBN 9784862854384
判型・ページ数 A5・272ページ
定価 本体4,500円+税
在庫 在庫あり
 

目次

 凡例
 序


第一部 フッサール現象学の存在論的前提

 はじめに――『論理学研究』について

 第一章 「スペチエス」と「スペキエス」について
  第一節 「スペキエス」について
  第二節 『論理学研究』「第一巻 純粋論理学序説」「第二九節」
  第三節 「スペチエス」と「意味 Bedeutung」
  第四節 普遍と個体
  第五節 認識過程における位置に着目して
  第六節『論理学研究』における「スペチエス」概念の纏め

 第二章 「スペチエス」概念のその後
  第七節 『現象学の理念』
  第八節 『イデーン』
  第九節 『形式的論理学と超越論的論理学』
  第一〇節 『経験と判断』

 第三章 フッサールによるロック「観念」説への批判
  第一一節 「観念」と「抽象」説
  第一二節 実体化
  第一三節 フッサールによる六つの批判
   (A) 第一の批判点――「あらゆる心的体験一般」が観念と呼ばれること
   (B) 第二の批判点――「観念」と「表象」の区別が説明できないこと
   (C) 第三の批判点――表象と表象されるものとの混同
   (D) 第四の批判点――感覚と内省の区別に理由がないこと
   (E) 第五の批判点――一般観念と複雑観念の区別がつかないこと
   (F) 第六の批判点――「像 Bild」と「表象 Vorstellung」の区別がつかないこと
  第一四節 ヒュームの「理拠的区別」への批判
  第一五節 「素朴な人」――デカルトとロック
  第一六節 内的知覚と外的知覚


第二部 「超越」と「還元」

 第四章 「超越」
  第一七節 「超越」と「的中性」
  第一八節 中世スコラ哲学と「超越概念」
  第一九節 近世哲学における「超越」の不在
  第二〇節 アカデミー版フランス語辞典に見る「超越」という語の変遷
  第二一節 カントの「超越論的」
  第二二節 ハイデガーの「超越」――無に向かう「超越」
  第二三節 サルトルの「超越」――他人との間としての「超越」

 第五章 「還元」と「エポケー」
  第二四節 『イデーンⅠ』の位置
  第二五節 フッサールの還元とデカルトの懐疑
  第二六節 「存在領圏」と「存在領域」
  第二七節 超越論的現象学的エポケー

 第六章 『形式的論理学と超越論的論理学』における「相互主観性」
  第二八節 『論理学研究』と『形式的論理学と超越論的論理学』
  第二九節 デカルト批判――主観性の徹底
  第三〇節 「相互主観性」概念とその導入
  第三一節 困難の深さ
  第三二節 「厄介な謎」
  第三三節 「世界」の構成と「私」の身体と心
  第三四節 その後の「相互主観性」
  第三五節 『形式的論理学と超越論的論理学』における「相互主観性」のまとめ

 第七章 デカルト哲学批判――『デカルト的省察』と『危機書』
  第三六節 デカルト哲学への二つの批判
  第三七節 デカルトの「マテーシス」概念(1)――『規則論』と『方法序説』
  第三八節 デカルトの「マテーシス」概念(2)――『省察』と『哲学の原理』
  第三九節 ライプニッツとデカルトの対立
  第四〇節 モナドとコギト
  第四一節 フッサールの「マテーシス」
  第四二節 「実体」
  第四三節 デカルトが「取り逃がしてしまった」こと
  第四四節 神と無限

 第八章 『デカルト的省察』と『危機書』の閉ざされた宇宙
  第四五節 他のエゴに向けて
  第四六節 「感情移入」と「アナロゴン」
  第四七節 「モナド」とは何か
  第四八節 「他の fremd」,「他者 Andere」,「別のエゴ alter-ego」
  第四九節 「モナド共同体」
  第五〇節 「モナド」と「他者」
  第五一節 「モナド論的成果」
  第五二節 『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』の狙い


 あとがき
 文献表
 索引

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内容説明

「現象学」とは何か。社会全体が混沌に向けて進んでいるように見えるとき,方法的基盤のない中で「現象学」は力をもつ。その思想の根底に,「私」の思うままに真実があるという思考の傾きが秘められているからである。フッサール現象学によれば,在るかどうか,真であるかどうか,善いかどうかの問いは,エゴである「私」の経験に依存する。
本書は,こうしたフッサール現象学に現出する,存在,真理,価値についての相対主義を,デカルト哲学を参照軸として,正面から批判する。
第Ⅰ部「フッサール現象学の存在論的前提」は,『論理学研究』を主な素材にしながら,フッサール哲学の基盤をなす存在論的(論理的)思考を明らかにする。そのために『現象学の理念』,『イデーンⅠ』,『イデーンⅡ』,『イデーンⅢ』,『形式的論理学と超越論的論理学』,『経験と判断』を主に参照する。こうしてフッサールの思索の底流に経験主義的認識説を見出す。
第Ⅱ部「「超越」と「還元」」は,両概念を問題の基底におきながら,『デカルト的省察』から『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』まで,自我論を脱したと思うときに傲慢が生じる道程を追う。
現代の哲学的状況を問い続けてきた著者による,極めて相対主義的で利己主義的な現代社会の風潮に一石を投ずる哲学研究である。

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