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発生の起源と目的

フッサール「受動的綜合」の研究

発生の起源と目的
著者 山口 一郎
ジャンル 哲学・思想
出版年月日 2018/10/20
ISBN 9784862852823
判型・ページ数 A5・552ページ
定価 本体8,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次

序論 他者と時間――改めて受動的綜合を問う

   第 I 部 開かれくる受動的綜合の世界

第一章 心と身体の関係――「我−汝−関係」の現象学
 第一節 自分の身体で実感される時間と時計で計られる時間――現象学研究と自然科学研究
 第二節 乳幼児期の我−汝−関係における心と身体の関係(第一段階)
 第三節 「我−それ−関係」の形成と心と身体の関係(第二段階)
 第四節 我−汝−関係における心身関係(第三段階)
 第五節 心と身体の《あいだ》の関係性からみた心身関係

第二章 受動性と能動性の関係についての原理的考察
 第一節 「受動性が能動性に先行する」とは,どのようなことか
 第二節 連合における「類似性」とは何を意味するか――ヒュームとカントとの対比をとおして
 第三節 過去把持の二重の志向性とその訳語について
 第四節 交差志向性における「本質同等性」と延長志向性における「時間位置」の構成
 第五節 過去把持の第三の志向性?
 第六節 時間と連合,そして触発――合致から相互覚起としての連合へ
 第七節 究極の能動性が受動性に似てくること――我‐汝‐関係と本質直観

第三章 受動的綜合と相互主観性論
 第一節 相互主観性の問題とその解明の方向づけ
 第二節 自他の身体の構成と相互主観性論
 第三節 受動的綜合としての対化による「相互主観的自然」の構成
 第四節 共同精神における人格共同体
 第五節 「汝」ないし「他者の他者性」をめぐって
 第六節 間モナド論的目的論における相互主観性論
 第七節 学際的哲学研究とモナド論的現象学の目的論



   第 II 部 受動的綜合の位置づけ

第一章 微小表象と受動的綜合――フッサールのモナド論的現象学の方向づけ
 第一節 エゴロギー的(自我論的)現象学からモナド論的現象学への変転
 第二節 自我論的現象学からモナド論的現象学への変転における相互主観性の問題
 第三節 受動的綜合としての微小表象
 第四節 間モナド的時間化とコミュニケーション

第二章 メルロ=ポンティの「肉」の概念と「受動的綜合」
 第一節 メルロ=ポンティ『知覚の現象学』における時間論の展開
 第二節 過去と現在の同時性としての肉
 第三節 学際的哲学としての現象学の方向性

第三章 暗黙知と受動的綜合
 第一節 暗黙知と受動的綜合の対照考察
 第二節 SECIモデルにおける暗黙知と受動的綜合



   第 III 部 発生的現象学の展開

第一章 西田幾多郎とフッサールにおける直観と反省――新たな社会哲学を求めて
 第一節 西田の自覚の概念とベルクソンの純粋持続の理解に潜む問題点
 第二節 純粋経験の自発自展の説明に活用された論理と数理
 第三節 純粋経験の主客未分に潜む「無」と「否定」の契機
 第四節 「知・情・意」の全体からみた純粋経験の自己発展

第二章 「予防原則」の理論的背景について
 第一節 予防原則と科学的知見の関係
 第二節 福島原発事故における予防原則の適用の是非について
 第三節 「道徳のジレンマ」?
 第四節 感覚と言語,数量化の呪縛

第三章 学際的哲学としての神経現象学の方法論
 第一節 神経現象学の方法論
 第二節 神経現象学の「現在−時間意識」の解明
 第三節 神経現象学からみた学際哲学の方法論

第四章 カップリング(対化)をとおしての身体環境の生成
 第一節 リハビリの現場でのカップリングの働き
 第二節 カップリングと対化
 第三節 カップリング(対化)による身体環境の生成の特質



あとがき
参考文献
索引

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内容説明

後期フッサールの展開した,自我の関与を含まない受動的志向性を射程に入れた「発生的現象学」によって,すべての「意味と価値の生成(発生)」の探究領域が開かれた。それにより「自・他の身体の区別はどのように生成したのか」,早くも,遅くも,流れるように流れるという「生きた時間の謎」を問うことができるようになった。第Ⅰ部では「電車の急ブレーキで隣の人の足を踏んでしまった」という日常経験の事例の考察から,この他者論と時間論の二つの問題をその発生のプロセスにまで遡り解明していく。

第Ⅱ部では,ライプニッツの「微小表象」,メルロ=ポンティの「肉」概念,M. ポランニーの「暗黙知」と,「受動的綜合」をそれぞれ比較考察することで,その哲学史における位置付けを明確にし,発生的現象学のさらなる可能性を示す。

第Ⅲ部では,現代のグローバル化された世界,また日本社会の抱える具体的な諸問題に対し,発生的現象学が問題解決の端緒を示すことができるかを試みる。

本書は,発生的現象学における受動的綜合の原理的考察から,歴史的考察をへて,現代の諸問題への応用まで総合的に探究した画期的業績である。

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