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井筒俊彦の比較哲学

神的なものと社会的なものの争い

井筒俊彦の比較哲学
著者 バフマン・ザキプール
ジャンル 哲学・思想
出版年月日 2019/02/28
ISBN 9784862852915
判型・ページ数 菊判・336ページ
定価 本体5,300円+税
在庫 在庫あり
 

目次

序文(松本耿郎)
まえがき

序論
 第1節 本書の主題
 第2節 近年の井筒理解の傾向と問題
 第3節 本書の構成
 第4節 井筒の形而上学を構成する問題系

 第Ⅰ部 比較哲学の本質とそれがもたらす結果

第1章 比較哲学の目的と義務

第2章 比較哲学の必然性と政治的・社会的基盤――比較哲学の本質
  第1節 前近代における比較哲学
  第2節 近代における比較哲学

第3章 比較哲学に対する批判――比較哲学のもたらす結果
  第1節 学問的な批判
  第2節 政治的・社会的な批判

第Ⅰ部の結び

 第Ⅱ部 井筒比較哲学の意義――神的なものをめぐって

第4章 「歴史を超える対話」への根拠
  第1節 第一の根拠
  第2節 第二の根拠
  第3節 第三の根拠

第5章 井筒の歴史的方法論
  第1節 初期の『コーラン』研究
  第2節 『意味の構造』の方法論
  第3節 井筒の方法論重要性

第6章 マッソン = ウルセルの比較哲学と井筒の方法論
  第1節 マギル大学での出会い
  第2節 『スーフィズムとタオイズム』の論点
  第3節 イスラーム哲学における「存在」の分別
  第4節 『スーフィズムとタオイズム』執筆の動機
  第5節 イスラーム哲学における「存在」の概念
  第6節 神秘哲学における「存在」
  第7節 井筒の比較哲学とマッソン = ウルセル

第7章「歴史を超える対話」とは何か――アンリ・コルバンの比較哲学と井筒の方法論
第1節 スフラワルディー哲学と「歴史を超える対話」
第2節 M領域に至る方法論としての「隠されたるものの開示」

第Ⅱ部の結び

 第Ⅲ部 神的なものと社会的なものの争い――超歴史における伝統を探求して

第8章 井筒と政治
  第1節 個人的な特性
  第2節 その思想の構造
  第3節 日本人研究者の見解
  第4節 イスラーム改革主義者との関係

第9章 イスラーム改革主義者との関係
  第1節 井筒のアラビア語教師たちの影響
  第2節 井筒とイランの知識人,シーア派ウラマーとの関係

第10章 反対のオリエンタリズム――井筒比較哲学と世俗主義
  第1節 哲学者の政治的アプローチ
  第2節 比較哲学の政治性に関する先行研究
  第3節 オリエンタリズムと反対のオリエンタリズム

第11章 伝統復興と反対のオリエンタリズム
  第1節 ナスル,井筒,コルバン――イラン王立哲学アカデミー
  第2節 シャイガン,井筒,コルバン――イラン文化の対話研究所

第12章 イラン革命と井筒比較哲学――その認識論的な問題と帰結
  第1節 井筒とコルバンの比較哲学における他者化
  第2節 伝統と革命

第Ⅲ部の結び

結語

謝辞
引用・参考文献表
付録(資料,写真,書簡)
索引
英文要旨

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内容説明

井筒は10年に及ぶイラン滞在中に,12イマーム・シーア派世界のヒクマ哲学とイルファーン神智学の研究に従事,それらを融合・発展させ,12イマーム・シーア派神学の煩瑣哲学の問題を現代に適合させ,独自の業績をあげて尊敬された。1979年のイラン・イスラーム革命を機に帰国し「東洋思想」の研究に着手したが,イランでは帰国後の井筒の活動は知られていない。

本書は井筒の学問に傾倒した著者が,来日して井筒の比較哲学の研究に没頭した成果である。著者はフーコーの「知と権力の関係」やサイードの「オリエンタリズム」の考えを踏まえ,井筒の比較哲学を考察する。

第Ⅰ部はトインビーの文明論やマッソン=ウルセルの比較哲学を通して,比較哲学の必要性と政治的・社会的現実との連動関係を分析する。

第Ⅱ部では,井筒に影響を与えたアンリ・コルバンの思想を検討し,井筒の比較思想の意義を解明する。

第Ⅲ部は井筒とコルバンにおける比較哲学の政治的・社会的次元と認識論的問題を考察するため,オリエンタリズムと「反対のオリエンタリズム」の意味を検討,イラン革命と井筒の比較哲学との関連にも言及する。

わが国では現象学や言語学,日本文化,イスラーム学などから井筒哲学が研究されてきたが,本書は比較哲学の背後で働く社会的・政治的事象との関連で井筒比較哲学を読み直した意欲的な業績である。

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