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渡来人陳元贇の思想と生涯  新刊

江戸期日本の老子研究

渡来人陳元贇の思想と生涯
著者 李 麗
ジャンル 哲学・思想
出版年月日 2024/01/31
ISBN 9784862854001
判型・ページ数 A5・344ページ
定価 本体6,500円+税
在庫 在庫あり
 

目次

序論
 一 問題の所在
 二 本論の構成


第一部 陳元贇の生涯

第一章 陳元贇の傳記
 はじめに
 一 江戶期における陳元贇の傳記史料の總括
 二 中山和淸著『諸士傳畧稿』の陳元贇傳
 おわりに

第二章 陳元贇來日の目的――『人見雜記』の記錄を中心に
 はじめに
 一 『人見雜記』の著者
 二 人見卜幽『人見雜記』に記された陳元贇の條についての考察
 三 陳元贇と單鳳翔使節の投書事件
 おわりに


第二部 陳元贇の思想――林希逸『老子鬳齋口義』の批判を中心に

第三章 『老子經通考』の序跋と傳本硏究
 はじめに
 一 『老子經通考』の序文
 二 『老子經通考』の跋文
 三 『老子經通考』の傳本狀況および初版の年代
 おわりに

第四章 陳元贇『老子經通考』と焦竑『老子翼』――引用狀況に基づく考察
 はじめに
 一 『通考』と『翼』の『老子』註引用狀況の比較
 二 基本資料『翼』の選擇的な利用
 三 林希逸『口義』批判のための『通考』執筆
 四 『通考』に見られる誤植
 おわりに

第五章 陳元贇の有無觀
 はじめに
 一 陳元贇『老子經通考』第一章に見える林希逸批判
 二 陳元贇『老子經通考』第十章に見える林希逸批判
 三 陳元贇『老子經通考』第十一章に見える林希逸批判
 おわりに

第六章 陳元贇の「天心聖心一致」論
 はじめに
 一 林希逸『老子鬳斎口義』第五章の註
 二 陳元贇『老子經通考』第五章の註
 三 陳元贇の批判の意義
 おわりに

第七章 陳元贇の實學思想
 はじめに
 一 陳元贇『老子經通考』第六章に見られる林希逸批判
 二 陳元贇『老子經通考』第三十八章に見られる林希逸批判
 三 陳元贇『老子經通考』第六十章に見られる林希逸批判
 四 陳元贇『老子經通考』第六十一章に見られる林希逸批判
 五 陳元贇『老子經通考』第六十三章に見られる林希逸批判
 おわりに

結論
 一 全體のまとめ
 二 今後の課題

附章 陳元贇の書翰
 はじめに
 一 元政宛て內閣文庫藏『陳元贇書翰』(轉寫本)
 二 瑞光寺藏『陳元贇書牘(開山宛廿四通)』(卷子本眞蹟)
 三 瑞光寺藏『芝山尺牘』(元政上人筆)
 おわりに
 内閣文庫藏『陳元贇書翰』写真版(図8-3~図8-42)
 元政庵瑞光寺藏『陳元贇書牘(開山宛廿四通)』(卷子本眞蹟)(飜刻8-1)
 元政庵瑞光寺藏『芝山尺牘』(元政上人筆)(飜刻8-2)

あとがき
初出一覽
參考文獻一覽
陳元贇年譜
索引

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内容説明

長い日中文化交流史の中で,江戸時代初期は明が滅亡し清に王朝が交代する変動期であった。混乱を避けるため,また日明貿易を介して,商人,医者,僧侶,文人など多くの明人が来日した。唐人屋敷が作られた長崎には,彼らとの交流を求め文化人が多く訪れた。渡来明人による文化の移植は,日本文化にいかなる影響を及ぼしたのか。
本書は,鎖国前の1619年に明から来日し,尾張藩に仕えた陳元贇(ちんげんいん)(1587-1671)に焦点を当て,彼が日本で執筆した『老子経通考』の分析を通して,近世老子思想の日本における受容を解明する。
第1部「陳元贇の生涯」では,江戸期の伝記史料を年代順に整理し,先行研究における史料間の不一致を考証して陳元贇の日本における生涯を再構成する。思想の他に詩,書,建築,製陶,拳法など多芸博識な人物像とともに,来日した真の目的とは何かをスリリングに描き出す。
第2部「陳元贇の思想」では,林羅山にも称賛され,老子解釈として当時日本で広く読まれていた林希逸『老子鬳齋口義』を批判した『老子経通考』について,初めて本格的に考察する。林注が儒教的立場の老子解釈であったことが彼の批判の骨子であることを読み解いて,日本における老子思想受容へ与えた影響を明らかにする。
巻末には,現存する陳元贇の書翰や詩など未公開史料を調査した附章,その写真と翻刻,および年譜を付す。
近世日本思想史における老子思想の役割や,儒家思想の在り方に新たな視点を与えるとともに,日中文化交流史においても一石を投じる画期的業績である。

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