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穀物輸出の代償  新刊

穀物輸出の代償
著者 服部 正治
ジャンル 経済学
出版年月日 2025/04/30
ISBN 9784862854339
判型・ページ数 菊判・220ページ
定価 本体3,600円+税
在庫 在庫あり
 

目次

まえがき

第1章 リカードウと土地の肥沃度
 1 肥料と収穫
 2 自由貿易下の穀物輸入量
 3 輸出国・輸入国の農業生産様式
 4 収穫逓減
 5 「本源的で不滅な力」
 6 第一次的自然と第二次的自然
 7 肥料

第2章 豊かな土地における欠乏――リカードウとアイルランド
 1 「社会の異なった段階」
 2 『原理』初版第5章:アイルランド
 3 ジョージ・エンサー『諸国民の人口に関する研究』
 4 『原理』第2版での改訂
 5 「新国」アイルランド
 6 ジャガイモ
 7 不在地主

第3章 穀物輸入源の変移
 1 穀物輸出国での土壌疲弊
 2 輸入穀物の消費と分解
 3 外部肥料の導入:グアノ
 4 穀物輸入国から見た輸出国農業
 5 小麦生産の拡大――西部へ

第4章 穀物輸出と土壌浸食
 1 新穀物輸入源の形成
 2 カナダ西部プレーリー開発
 3 合衆国大平原開発
 4 「悲惨な」「汚れた」30年代
 5 ダスト・ボウル
 6 『大地のレイプ』
 7 戦争と土壌保全

第5章 穀物輸出と地下水涸渇
 1 西経98度
 2 小麦の余剰
 3 灌漑:オガララ帯水層
 4 飼料穀物生産と牛肉産業

あとがき
索引

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内容説明

18世紀に始まる産業革命により近代的工業生産が展開,農村から都市への人口集中は,穀物需要を急拡大させた。イギリスは世界最大の穀物輸入国になり,食料全体の輸入量は1850年代から半世紀で8倍に達し,輸入額全体の4割に当る。1873年には小麦の輸入量が国内生産を上回り,輸出国はポーランドなどバルト海からアメリカ大陸に移った。1880年頃には合衆国についでカナダも新たな供給地となる。これら穀物輸出の増加は,合衆国の大平原開拓,カナダ・プレーリー開発や大陸横断鉄道の敷設などに多大な影響を与えた。さらに20世紀になり第一次大戦までは英国人移民の急増と巨額の英国資本の投入が大規模機械化と化学肥料の普及を促した結果,激しい小麦価格の変動をもたらす。その中で新たにオーストラリアが参入し連合王国を形成した。
1930年代には高温による干ばつと連作で乾燥した表土が風で飛散し,農業生産への打撃と人々に甚大な健康被害を与えるダスト・ボウルが発生している。土壌の劣化と破壊そして土壌漂流と侵食により,土地の肥沃度は減退し,略奪農業の実態が顕在化した。
産業化が始まって2世紀余り,英国に象徴される輸入国の消費者が,輸出国の農業者の抱える困難に対しいかに無関心であったか。70億の人口が100億になると予想される今日,食糧問題は人類存続の主要課題となった。
本書は輸出国の視点で土壌保全や水問題,移民,資本などの歴史的実態を解明し,未来の課題を提示する画期作。

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