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書のひととき  新刊

中国書道史漫歩

書のひととき
著者 辻井 京雲
ジャンル 歴史 > 東洋史
芸術
出版年月日 2025/05/19
ISBN 9784862854377
判型・ページ数 4-6・524ページ
定価 本体2,700円+税
在庫 在庫あり
 

目次

(口絵4ページあり)

  凡例
  序(辻井 樹)

第一章 先秦
 第1話 蒼頡造字伝説
 第2話 文字か符合か――新石器時代・陶文
 第3話 二〇世紀への偉大な贈り物――殷・甲骨文
  コラム1 匂い立つ文字
 第4話 女性の力――殷・司母戊方鼎
 第5話 犬とともに――殷・二祀【戈の右に卩】其卣
 第6話 爵を賜う――殷・子媚爵
 第7話 甲羅の文字――西周・周原甲骨
 第8話 微子の墓――西周・鹿邑太清宮長子口墓出土青銅器群
 第9話 永く宝として用いよ――西周・史牆盤
 第10話 大盤ぶるまい――西周・逨盤
 第11話 文字を奏でる――春秋戦国・編鐘銘
 第12話 臥薪嘗胆の剣――春秋戦国・越王句践剣
 第13話 もののふの美学――春秋戦国・王孫【言の下に廾】銅戈
 第14話 血盟の書――春秋戦国・侯馬盟書
 第15話 貨幣――春秋戦国・貨幣
 第16話 石鼓の歌――春秋戦国・石鼓文
 第17話 通行の符節――春秋戦国・鄂君啓節
 第18話 割り符――春秋戦国・虎符
 第19話 古陶文――春秋戦国・陶文

第二章 秦漢
 第20話 文字の力――秦・廿六年青銅詔版銘
 第21話 碑はここに始まる――秦・泰山刻石
 第22話 碑の威光――秦・琅邪台刻石
 第23話 威厳の文字――秦・小篆十二字磚
 第24話 咸陽あやうし――秦・兵馬俑刻文
 第25話 肉筆の出現――秦・龍崗秦簡
 第26話 竹片の文書――秦・睡虎地秦簡
 第27話 筆の進化――秦・天水秦簡 睡虎地秦簡
 第28話 兵馬俑に匹敵する大発見――秦・里耶秦簡
 第29話 君 酒を幸たのしまん――前漢・漆書
 第30話 絹の海――前漢・馬王堆帛書
 第31話 封とは塗なり――前漢・封泥
 第32話 金印の輝き――前漢・金印(一)
 第33話 南の「帝国」――前漢・金印(二)
 第34話 妙味の篆書――前漢・瓦当
 第35話 骨の札――前漢・骨簽
 第36話 国境安寧――前漢・竟寧元年磚
  コラム2 もはや紅はなし
 第37話 胸のすく一筆――前漢・五鳳二年刻石ほか
 第38話 戦は止まず――前漢・銀雀山漢簡
 第39話 棄市――前漢・王杖十簡
 第40話 章草体の出現――前漢・尹湾簡牘
 第41話 刀筆の吏――前漢・書刀
 第42話 紙の出現――前漢・天水紙ほか
 第43話 小さな大資料――前漢・残紙
  コラム3 鼎と年号
 第44話 ヘディン賛――漢代・居延漢簡ほか
 第45話 流沙の果て――漢代・敦煌漢簡ほか
  コラム4 隷書考
 第46話 隷書の巨石――新・連島界域刻石
 第47話 うたかたの王朝――新・始建国二年規矩獣帯鏡
 第48話 古味と新風――後漢・三老諱字忌日記
 第49話 胸をうつ大きな気宇――後漢・開通褒斜道刻石
 第50話 漢人のウィット――後漢・石門頌
 第51話 知的たたずまい――後漢・礼器碑
 第52話 重厚長大な碑――後漢・鮮于璜碑
 第53話 永遠はかなわず――後漢・熹平石経
 第54話 死者の尊重――後漢・刑徒磚

第三章 三国・晋・五胡十六国
 第55話 隷書から楷書へ――三国の書
 第56話 壁に文あり――三国・三体石経
 第57話 蜀道の難――三国・衮雪題字
 第58話 奇想天外の書――三国・天発神讖碑
 第59話 古人の息遣い――三国・走馬楼呉簡
 第60話 刺を通ず――三国・朱然墓出土木刺
 第61話 線条のおおらかさ――西晋・咸寧四年磚
 第62話 迫りくる息づかい――西晋・陸機「平復帖」
 第63話 幻の楼蘭――西晋・楼蘭残紙
 第64話 オアシスから出た紙――西晋・懸泉遺址出土残紙
 第65話 紙価あがる――西晋・呉書残巻
 第66話 埋もれた名品の再発見――西晋・索靖「出師頌」
 第67話 李柏の手紙――東晋・李柏文書
 第68話 あこがれの書――東晋・王羲之「喪乱帖」
 第69話 書美の開花――東晋・王羲之「孔侍中帖」
 第70話 避諱と書――東晋・王羲之「初月帖」
 第71話 三希の第一――東晋・王羲之「快雪時晴帖」
 第72話 龍がおどる運筆――東晋・王羲之「行穣帖」
 第73話 謎めいた一帖――東晋・王羲之「寒切帖」
 第74話 十七帖の秘密――東晋・王羲之「十七帖」
 第75話 蘭亭偽書論争――東晋・王興之墓誌ほか
 第76話 蘭亭づいて――東晋・王羲之「蘭亭序」
 第77話 生気漲る書――東晋・王羲之「楽毅論」
 第78話 花季少女――東晋・王羲之「孝女曹娥碑」
 第79話 きわだつ才能――東晋・王廙「両表」ほか
 第80話 真に迫る筆力――東晋・王献之「廿九日帖」
 第81話 名品の謎――東晋・王献之「中秋帖」
 第82話 洒落っけのある書――東晋・王献之「鴨頭丸帖」
 第83話 鮮やかな筆触――東晋・王珣「伯遠帖」
  コラム5 さすがは書聖
 第84話 よそゆきの書――東晋・爨宝子碑/宋・爨龍顔碑
 第85話 新奇の風――前秦・広武将軍碑
 第86話 漢に焦がれて――後秦・呂憲墓表
 第87話 おおどかな趣――西涼・妙法蓮華経
 第88話 ミステリー――北凉・仏説菩薩蔵経

第四章 南北朝
 第89話 二王の退風――宋/斉・王慈「柏酒帖」「汝比可帖」
 第90話 北碑を髣髴とさせる逸品――梁・瘞鶴銘
 第91話 意気揚々の書――北魏・司馬芳残碑
 第92話 神品たる風格――北魏・中嶽嵩高霊廟碑
 第93話 おっとりと稚拙な雰囲気――北魏・大同七年銘
  コラム6 北魏異体字考
 第94話 陽刻の銘文――北魏・朱義章「始平公造像記」
 第95話 気品漂う書――北魏・北海王元詳造像記/元詳墓誌
 第96話 古陽洞に立つ――北魏・一弗造像記/解伯達造像記
 第97話 龍門造窟のなぞ――北魏・龍門二十品
 第98話 のびのびとして独特の風格――北魏・石門銘
 第99話 勁く麗しき風趣――北魏・鄭道昭「東堪石室銘」
 第100話 北朝第一の書――北魏・鄭道昭「鄭羲下碑」ほか
 第101話 鄭書の再評価――北魏・鄭道昭「九仙題字」
 第102話 息をのむ強靱な線と造形――北魏・張猛龍碑
 第103話 欧褚の先声――北魏・高貞碑
 第104話 山岳遊行の証――北斉・鄭述祖「天柱山銘」ほか
 第105話 自然に融け込む書――北斉・泰山金剛経磨崖

第五章 隋唐
 第106話 墨光のなまめかしさ――隋・智永「真草千字文」
 第107話 自信と自尊――唐・太宗「温泉銘」
 第108話 若き日の顔真卿――唐・顔真卿「郭虚己墓誌」
 第109話 毎日展のシンボル――唐・顔真卿「祭姪文稿」
 第110話 文字の威厳――唐・顔真卿「干禄字書」
 第111話 名品かくも――唐・唐人臨蘭亭序
 第112話 手だれの書――唐・龍保帖
  コラム7 中国の簡体字

  解題(下田章平)
  図版出典一覧
  索引

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内容説明

かたちと意味を合わせて表現する造形芸術である書道は,どのように生まれ,移り変わり,発展してきたのか。
本書は,書道家であり研究者でもある著者が,中国学の幅広い教養を背景に,出土資料や伝世作品を取り上げて,中国書道史を軽妙な語り口で描く150の物語である。
殷時代の甲骨や青銅器に刻まれた記号から始まり,秦の始皇帝による文字統一と標準書体の制定,木簡・竹簡・帛書から画期的な紙の登場に至る用具と書体の変遷,書聖と謳われた王羲之の名品の数々,北方騎馬民族の石碑に残る漢字への憧れの痕跡など,唐代までを対象に,新たな知見を書道史に吹き込む。
大英博物館や故宮博物院など各地において出土資料の実見や簡牘資料の研究を行いつつ,時にゴビ砂漠や敦煌へ直接パジェロを飛ばし,楼蘭に想いを馳せて,著者は文字を残した人物の経歴や書かれた歴史的経緯をも俎上に載せる。手本を写した肉筆文字の様相,筆の形状までをも見すえた論述には,書家としての鑑賞眼がきらりと光る。
漢字の成り立ち,文字の歴史を繙き,人間にとり記録とは何かを問いかける,刺激に満ちた中国書道史への招待。
今では貴重となった現地調査の図版資料も多く収録する。

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