ホーム > 旅する英文学

旅する英文学  新刊

中世・初期近代における移動のナラティヴ

旅する英文学
著者 松田 隆美 編
久木田 直江 編
ジャンル 歴史 > ヨーロッパ中世史
文学
出版年月日 2026/09/15
ISBN 9784862854667
判型・ページ数 菊判・336ページ
定価 本体5,400円+税
在庫 在庫あり
 

目次

 はじめに(松田隆美/久木田直江)

 序論 近代以前の英文学と「旅のナラティヴ」(松田隆美)
  1 「旅のナラティヴ」とジャンル
  2 虚構性 / fictionality
  3 驚き / wonder
  4 旅人 / traveller
  5 目的地 / destination
  6 移動 / movement
  7 読書 / reading and writing

第Ⅰ部 旅のフィクションに見える葛藤

 1 『デーン人ハヴェロック』における移動,成長,そして多民族共生(岡本広毅)
  1 『デーン人ハヴェロック』における民族と歴史
  2 年代記におけるデーン人の歴史的正統性
  3 ハヴェロックの旅と地域的貢献
  4 ヴァイキングの移動,ハヴェロックの移動

 2 東方世界への旅とアイデンティティの揺らぎ――『ハンプトンのベヴィス』におけるアルメニアの象徴的機能(趙 泰昊)
  はじめに
  1 中英語版『ベヴィス』におけるアルメニア――十字軍的な理想と地理的移動がもたらす不安
  2 東方世界におけるアイデンティティの模索とアルメニアの王女ジョシアン
  おわりに

 3 聖人伝的ロマンス『サー・イサンブラス』における贖罪の旅(小川真理)
  はじめに
  1 旅の契機
  2 イサンブラス贖罪の過程と意味

 4 チョーサー「船長の話」と「郷士の話」における旅と倫理的規範の危機(工藤義信)
  はじめに
  1 「船長の話」における商人の葛藤
  2 「郷士の話」におけるオルレアンへの旅
  おわりに

第Ⅱ部 旅行記の知的ひろがり

 5 『マンデヴィルの旅行記』と地上楽園への旅路(大沼由布)
  はじめに
  1 聖書,百科事典,旅行記
  2 『マンデヴィルの旅行記』
  おわりに

 6 聖地回復の文学における空想的地理――エジプトと聖地への変幻自在の旅のナラティヴ(杉山ゆき)
  はじめに
  1 聖地回復の戦術書『約束の聖地の重大な征服の軍事の宝玉』における仮想のエジプト遠征
  2 『リチャード獅子心王』における聖地巡礼と遠征
  おわりに

 7 異国で見聞すべき物事の記録――ファインズ・モリソンのヨーロッパ・レヴァント地方周遊記(髙橋三和子)
  はじめに
  1 物と情報の蒐集文化に基づいた旅のすすめ
  2 街の多様かつ主要な物事を描いた旅行記

 8 月旅行のナラティヴ――『月の男』にみる複合的な語りと17世紀ヨーロッパの知的想像力(穴本玲奈)
  はじめに
  1 メニッポス的な皮肉
  2 神学と自然哲学の交錯が生む宇宙像
  3 地上の地誌や民族誌に基づく月の世界
  おわりに

第Ⅲ部 新たな旅ナラティヴの可能性

 9 解釈をめぐる旅としてのドリーム・ヴィジョン――『公爵夫人の書』と『人生の巡礼』(杉藤久志)
  はじめに
  1 『人生の巡礼』における文字と寓意
  2 『公爵夫人の書』における読者としてのチョーサー

 10 15世紀の不運な旅人――『浪費の都ロンドン』における移動,空間,アイデンティティ(新居達也)
  はじめに
  1 旅のナラティヴによって形作られるロンドン像――多様な要素をつなぎ合わせる語り手の移動
  2 ロンドンが形作る旅のナラティヴ――都市空間のネットワークから旅人への影響
  3 凱旋入城との比較――アイデンティティの構築/解体
  おわりに――ネットワークの果て,あるいはアイデンティティの回復(不)可能性

 11 書簡にみる渡英カトリック宣教師の移動――殉教者エドマンド・キャンピオン,死への旅路(長井 薫)
  はじめに
  1 自己欺瞞から自己形成へ
  2 大陸各地での準備期間
  3 国内巡業を経て殉教死へ
  おわりに

 12 アンソニー・マンディのローマ滞在――ジャンルを越境する「旅」の語り/騙り(坂巻政彦)
  1 旅は語られる/騙られる――『英国人のローマ生活』の位置付けの困難さ
  2 旅を記す――語学習得としての留学
  3 苦難(travail)を伴う旅(travel)――プロテスタント信仰者としての自己演出
  4 諜報としてのローマ滞在――反カトリック政策の高まりと偏向的言説
  5 旅するナラティヴ――『英国人のローマ生活』と殉教者伝

 13 逸脱する叙事詩――『失楽園』におけるサタンの遍歴とアイデンティティの崩壊(松村祐香里)
  はじめに
  1 古典叙事詩と『失楽園』の旅
  2 地獄から楽園へ――空間の移動とアイデンティティのゆらぎ
  3 再びの楽園から地獄へ――偽りの勝利と沈黙への帰還
  おわりに

 用語解説(新居達也)
 索引
 執筆者紹介
 英文目次

このページのトップへ

内容説明

「どんな物語も,旅の物語である」――歴史家ミシェル・ド・セルトーが評したように,物語には本質的に「旅」が組み込まれている。
本書は,既存のジャンルにとらわれず,13~17世紀のイギリスで生み出された多様な作品を「旅のナラティヴ」として読み解く共同研究の成果である。印刷メディア革命や宗教改革,さらには世界の地理的拡大によって社会が大きく変化した時代に,旅はどのように語られ,いかなる役割を担ったのか。巡礼記や空想旅行記,十字軍戦記に騎士道ロマンス,さらにはチョーサーやミルトンをも横断しつつ,その豊かな展開を描き出す。
序論で,近代以前の作品を分析する理論的視座を示した上で,第Ⅰ部「旅のフィクションに見える葛藤」では,旅を異文化との出会いとして捉え,他者との接触がもたらす価値観の揺らぎとアイデンティティの形成を論じる。第Ⅱ部「旅行記の知的ひろがり」では,宗教的探究から地理や自然への関心,蒐集文化,知的想像力に至るまで,旅の記録が広げた知の世界を探る。第Ⅲ部「新たな旅ナラティヴの可能性」は,殉教者の書簡や『失楽園』など従来は旅行文学に属さなかった作品を読み直すことで,新たな読解の可能性を展望する。さらに,各章共通のキーワードを集めた用語解説を付ける。
旅の経験に刻まれた思索の軌跡をひもとき,人々が世界をいかに捉えたかに迫る本書は,英文学という枠を超え,社会史や精神史にも射程を伸ばす,刺激に満ちた一冊。
デジタル革命が世界をつなぐ今日,新たな旅が始まる。

このページのトップへ

関連書籍

〈声〉とテクストの射程

〈声〉とテクストの射程

新潟大学人文学部研究叢書6

著者:高木 裕 編
 
 
若きマン兄弟の確執

若きマン兄弟の確執

新潟大学人文学部研究叢書1

著者:三浦 淳 著
 
 

このページのトップへ