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ゲーテとドイツ精神史

講義・講演集より

ゲーテとドイツ精神史
著者 エルンスト・カッシーラー
田中 亮平 編訳
森 淑仁 編訳
ジャンル 哲学・思想
シリーズ 知泉学術叢書
出版年月日 2020/01/20
ISBN 9784862853080
判型・ページ数 新書・472ページ
定価 本体5,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次

第 I 部 ゲーテと精神史のための論集
1 ドイツ精神史をめぐる哲学的諸問題と諸傾向
 ドイツ精神史の理念
 精神的根源現象とその具体化
 哲学と歴史
 哲学から宗教や神話的なものへ
 プラトンの根源概念と精神の同一性
 ヘーゲルにおける生成としての哲学
 現代の環境理論
 因果的依存関係の問題点
 統一体としての精神とゲーテの「繰り返される反映」
2 ゲーテにおける教養と教育の理念
 教養(Bildung)の語に含まれる両義性
 教養概念の根源とゲーテ
 単一性と多数性,存在と生成
 ゲーテにおける自然理解
 教養概念の下降の歴史
 原体験と教養体験の対立,グンドルフのゲーテ解釈
 統一概念としての教養
3 ゲーテの内的形式の理念
 カントの形式的観念論
 ゲーテ,シラー,フンボルトにおける形式
 ゲーテにおける内的形式の理念
 ゲーテの生命感覚
 個性の秘密
 モナドとエンテレヒー
 社会的なものとの関係
 「諦念」と「制限」
4 ゲーテの内的形式の理念――第一講義「人間」(1935)
 中心の理念の必要性
 ゲーテにおけるメタモルフォーゼの概念
 形成の理念と神の理念
 存在と生成
 同一性と変化をまとめる「形態(Gestalt)」
 節度の概念
 人間形成の理論
 ゲーテの自己形成
5 ゲーテの内的形式の理念――第二講義「自然」(1935)
 断片「自然」,ゲーテの汎神論
 詩と科学を統一する内的形式の理念
 直感知
 ゲーテの自然研究
 感情と科学の統一:『色彩論』
 断片「自然」,ゲーテの汎神論
 特殊と普遍:象徴的直感
 経験的自然研究との衝突:ニュートンの光学
 経験的自然研究との衝突:リンネの植物学
 ヴァイマル入り後の自然研究
 連続性の要求
6 ゲーテの内的形式の理念――第三講義「文学」(1935)
 火成説の拒否
 有機的自然科学:リンネの植物学に抗して
 確固性と内的変化の可能性:メタモルフォーゼ
 文学ジャンルの強制とそこからの解放
 文学を生み出すデモーニッシュな精神
 発生し育っていく詩
 内面の活動をうたう
7 『ファウスト断片』とファウスト文学についての考察
 『ファウスト断片』と「牢獄」の場の削除
 「デーモン」と「テュヘー」
 二つの力のせめぎあい
 二つの生活圏:詩作と仕事
 ゲーテと悲劇
 失われた読者
 大いなる革新の到来
 老年期の抒情詩
 『ファウスト』第二部の完成
 老ゲーテの詩的日記:『温和なクセーニエ』
 詩的変容をほどこされた老年期
 「母たちの国」と老年の時間
 詩的霊感と意識的省察の繰り返し
 生の詩的な鏡としての『ファウスト』文学
 道徳的生と芸術的生の統合
8 ゲーテとカント
 ゲーテの重要な一言
 『判断力批判』における有機的自然の扱い
 生物学における目的論的説明
 経験と理念の相関性
 悟性概念と純粋理性概念
 ゲーテの『私の植物研究の歴史』に即して
 形態学と原植物
 属的形式に代わる発生的形式の考察
 カントによる自然形式の発生的考察の要請
 ゲーテのカント摂取における真理
9 リンネについて――そして,植物学を取り扱う通常の方法
 モザイク的概念形成
 可変性を内包した概念
 分離と結合の過程の相互関連
 純粋な理性概念としてのメタモルフォーゼ
 個別現象から現象の連なりへ
 観察から考察,思念,結合への移行
 理念的連関によって結合された諸現象
 一般的総括

第 II 部 ゲーテ講義集
 若いゲーテ I
1 序論――「解放者」としてのゲーテ(第一講義)
 ゲーテ連続講義の趣旨
 ゲーテ文献学とヴァイマル版『ゲーテ全集』
 ゲーテ愛好家として
 『若い詩人へ一言』,「解放者」としてのゲーテ
 ゲーテの生涯とドイツ精神史
 シュトラースブルクの抒情詩
 イタリア旅行
 イタリアからの帰還とシラーとの遭遇
 ゲーテとドイツ精神史との「予定調和」
 ゲーテの青春期の全生涯に対する「象徴性」と世界的視野のひろがり
2 ゲーテとドイツ精神史(第二講義)
 「解放者」としてのゲーテとドイツ精神史
 ゲーテと当時の文学者たち
 ゲーテと当時の時代潮流との葛藤
 『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』とロマン派
 「青年ドイツ派」その他のゲーテ批判
 ゲーテにおけるコスモスへの意志,「形式への意志」
 『始原の言葉,オルフェウス風に』における美しい象徴的内実
3 『詩と真実』の芸術的ならびに思想的内実(第三講義)
 『詩と真実』の芸術性
 『詩と真実』の読み方
 従来の「自叙伝」
 「生の象徴的叙述」としての『詩と真実』
4 フランクフルトへの帰還――敬虔主義と神秘学の読書(第七講義)
 フランクフルト帰還後の読書
 『ファウスト』とスウェーデンボリ
 ルソーとカント
 ヘルダーにとってのルソー
5 シュトゥルム・ウント・ドラング運動の精神的根源――ルソーとヘルダー(第八講義)
 ゲーテのヘルダーとの出会いとルソー
 ルソーのドイツへの影響
 ルソーのカントへの影響――倫理学者カント
 カントとヘルダー
 ルソーのヘルダーへの影響とギリシャ
 シェイクスピアの開拓者ヘルダー
 ヘルダーと「民謡」
 ゲーテに対する影響――「特性芸術」
 道徳的文学,そして社会的文学

 若いゲーテ II
1 『ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン』(第二講義)
 ゲーテの弁護士としての活動
 歴史上のゲッツと『原ゲッツ』
 ゲーテによるゲッツの物語の「内面化」
 ゲーテとヘルダー,ハンス・ザックス,そして「詩的創造力」
 正義感の悲劇『ゲッツ』と法秩序の問題点
 主人公の内面における悲劇性
 『ゲッツ』と『ヴェルター』の親和性
 ヘルダーの『ゲッツ』に対する不評,そして『ゲッツ』の完成
 『ゲッツ』に対するヘルダーの是認
 ゲーテの本来の解放者としてのシェイクスピア
2 『ゲッツ』(追加講義)
 素材のメタモルフォーゼとゲーテ文献学のモデル詮索
 ゲーテの時代風刺としての『サテュロス』
 文献学の不毛なモデル詮索――『サテュロス』
 芸術作品の内的形式· 278
3 『若きヴェルターの悩み』(第三講義)
 ゲーテのヴェツラーの生活の始まりとロッテとの出会い
 ロッテへの思い募り,突然ヴェツラーを去る
 『ヴェルター』の成立
 「強引な有無を言わさぬ」文学的造形
 世界文学としての『ヴェルター』の本質
 世界苦の文学と根本的に区別される『ヴェルター』
 ゲーテの「生」への肯定的観想と,「芸術による自己解放」
4 『若きヴェルターの悩み』(追加講義)
 世界苦の文学に対する生の肯定の文学
 『ヴェルター』と『ファウスト』との親和性
 『ヴェルター』を『ファウスト』と区別するもの
5 『原ファウスト』(講義番号なし)
 ゲーテの本質の象徴的表現としての『ファウスト』
 『原ファウスト』の成立史
 『ルイーゼ・フォン・ゲヒハウゼン嬢の遺稿から』
 『ファウスト』とファウスト伝説
 ファウストの救済のモチーフ
 『ファウスト』と啓蒙の世紀
 『ファウスト』の詩作品としての統一性
6 『原ファウスト』(追加講義)
 ヴェルター,ファウスト,プロメテウスに共通の自立性
 プロメテウスのゼウスへの闘争の内面性
 ファウストにおける知の限界と魔術
 人類の自己解放の闘争としての『ファウスト』
7 若いゲーテの宗教(第五講義)
 若いゲーテの思想世界
 ゲーテの宗教観への独断的批判
 ゲーテにおける「敬虔」の本質
 ゲーテと敬虔「主義」
 ゲーテの宗教的寛容
 自然宗教としてのゲーテの宗教観
 一つの名称としての「汎神論」
 『ファウスト』に表現される若いゲーテの「神と自然」
 「スピノザ論争」――ドイツ精神史における「起爆薬」
 ゲーテのスピノザ研究とヤコービ
 ゲーテとスピノザの自然哲学
 スピノザの『エティカ』
 ゲーテのスピノザとの親和性
8 最終講義
 存在の大きなハーモニーにおける一つのトーンとしてのゲーテの青春時代
 自由と必然の問題
 自己解放の宗教と自己制御の宗教
 ゲーテの活動の統一性
 「不滅の太陽」の象徴性

 ゲーテの精神的業績
1 第一講義
 ゲーテ文献学とヴァイマル版『ゲーテ全集』
 ゲーテ愛好家として,ゲーテ熱狂者として
 『若い詩人へ一言』――「解放者」としてのゲーテ
 ゲーテの形成過程とドイツ精神史との関係
 当時の文学者たちと「プログラム」
 ゲーテの形成過程におけるシュトラースブルク時代
 ゲーテのイタリア旅行の意義
 ゲーテ賛美と批判――ノヴァーリス
 ゲーテと「青年ドイツ派」
 「生き生きとした原動力」としてのゲーテ
2 第二講義
 ゲーテの形成の歴史とドイツ精神の歴史
 ゲーテの自由概念とコスモスへの意志
 ゲーテにおける芸術家の自由
 ゲーテと「フマニテート」の理想
 自己形成と「内的形式」
 自然のマクロコスモスと人間の文化
 「存在の秩序」と「当為の秩序」――象徴言語の働き
 「解放者」としてのゲーテの象徴性

解説
あとがき
カッシーラー主要著作一覧
人名索引

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内容説明

本書ではカッシーラーの遺稿集のうちゲーテを論じた第10巻と11巻から主要なものを編集,訳出した。カッシーラーの体系的文化哲学「象徴形式の哲学」の源泉的モチーフはゲーテの芸術理論と科学理論に由来する。その自然観,芸術観の根幹は「有機的形態の形成と変成」であり,そこにゲーテの象徴論の要諦を見る。彼はゲーテのテキストに向き合い,哲学的,科学史的そして文芸学的関心を注いだ。
前半の「ゲーテと精神史」では,ゲーテが生の直接性において〈精神〉を捉えることにより,精神史の根底にある理念を問題とし,そして彼の教養理念はゲーテ文学の全体を貫いており,教養(人間形成)の概念が新たなドイツ語を生み出し歴史的に最も豊かで深いものであるとともに,教養の解体という危機をはらんでいたことが示される。
またカッシーラーは18世紀ドイツ精神史の根本問題である「形式」に注目,ゲーテ作品に〈純粋な形式〉の哲学を見出し,ゲーテの内的形式の理念が彼の自然観,芸術観,人間観の思想的哲学的核心であることを証明した。
後半の「若いゲーテ」では,「形式への意志」と「自由と形式」こそが,ゲーテの詩的発展と精神的発展のバランスを保つ力であったとして,『詩と真実』や『若きヴェルターの悩み』『ゲッツ』などを多面的に考察する。
カッシーラーの哲学の基軸が通説とは違い,カントよりむしろゲーテにあったことが本書を通して明らかにされる。

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