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一なるキリスト・一なる教会

ビザンツと十字軍の狭間のアルメニア教会神学

一なるキリスト・一なる教会
著者 浜田 華練
ジャンル 宗教
出版年月日 2022/03/23
ISBN 9784862853615
判型・ページ数 菊判・292ページ
定価 本体4,300円+税
在庫 在庫あり
 

目次

序論
 研究の対象
 研究史と本研究の位置づけ
 本書の構成
 研究の意義

第1部 ネルセス・シュノルハリの作品と生涯

第1章 アルメニア人の「離散」とネルセス・シュノルハリの出自
 第1節 バグラトゥニ朝アルメニア王国の滅亡とアルメニア人の「離散」
 第2節 パフラヴニ家とグリゴル・ルサウォリチの血統
 第3節 カトリコス・グリゴル3世の即位とアルメニア教会内部の分裂

第2章 ネルセス・シュノルハリの前期著作
 第1節 『叙事詩』におけるネルセス・シュノルハリの歴史叙述
 第2節 アルメニアと東の「ローマ」――ビザンツ・アルメニア教会間関係の緊張とヨハネス2世のキリキア遠征
 第3節 十字軍への期待と『エデッサの哀歌』

第3章 ネルセス・シュノルハリの後期著作――「歴史」から「信仰」へ
 第1節 カトリコス座の移転と孤立
 第2節 『信のことば』と『子イエス』――「われわれの」罪から「私の」罪へ
 第3節 『天とその装飾について』・『交代韻の詩の草稿』――被造世界へのまなざし
 第4節 『信をもって告白します』
 第5節 1166年の『回勅』

第1部まとめ

第2部 ネルセス・シュノルハリのキリスト論

第1章 誰が「合同」を目指したか?――ビザンツ・アルメニア間の教会合同交渉
 第1節 アルメニア語史料からみた「教会合同」交渉
 第2節 ギリシア語史料にみる「教会合同」交渉の過程
 第3節 「教会合同」の内実

第2章 カルケドンキリスト論と非カルケドン的キリスト論
 第1節 「一致」をめぐるキリスト論と教会論の重なり
 第2節 「神秘を囲む神学の塀」――カルケドン的キリスト論
 第3節 「受肉したロゴスの一なる本性」――非カルケドン派のキリスト論

第3章 教会合同関連文書におけるネルセス・シュノルハリのキリスト論
 第1節 「一なる本性」への賛美――アルメニア教会の信仰告白とキリスト論
 第2節 1165年教会合同以前の著作におけるキリスト論
 第3節 教会合同関連文書における信仰告白とキリスト論

第4章 ネルセス・シュノルハリの宇宙論
 第1節 ネルセス・シュノルハリの人間論――肉体と霊魂の合一・キリストの身体の非腐敗性
 第2節 結合(ハルヌムン xaṙnumn)――「二を一にする力」
 第3節 ネルセス・シュノルハリのキリスト論:その広がりと限界

第2部まとめ

結論

あとがき
文献一覧
索引

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内容説明

12世紀のアルメニアはビザンツ帝国をはじめ十字軍に関わるローマ,そしてイスラームやペルシャなどの多くの国家に囲まれ,民族や宗教の統合のために多くの苦難に直面していた。この時代を代表する詩人・文学者の修道士ネルセス・シュノルハリの生涯を通して,正教会とアルメニア教会の一致と,多くの文学作品により民族の統一に果たした彼の役割を歴史的背景の下に考察する。わが国だけでなく海外でも知られていないアルメニアの教会と歴史を通して,キリスト教史で見落とされがちな東方の諸教会に新たな光を当てた画期的な業績である。
451年のカルケドン公会議で公認された「一なるヒュポスタシス・二つの本性」のカルケドン信条に対し,アルメニア教会は「受肉したロゴスの合一した一なる本性」を教理に採用,この対立が12世紀の教会合同の争点となった。シュノルハリは教義の違いを相補的な関係として,双方ともに有効であると主張した。
キリスト論は「受肉したロゴス」という「人間となった神」が主題で人間の探究を意味し,さらに教会を「キリストの体」と見なすパウロのキリスト論は教会論であり,それを踏まえてシュノルハリのキリスト論を解明する。
第1部では教会合同に携わる以前のシュノルハリの生涯と作品を跡づけ,晩年のキリスト論の思想的発展の意義を検討する。第2部では,シュノルハリの政治的立場がキリスト論に与えた影響を明らかにする。
ウクライナの現在とアルメニアの過去を考える時,歴史に翻弄される小国の姿が鮮明に浮かび上がってこよう。

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