トマスによる四福音書の注解で,マタイに続くマルコが扱われる。これは膨大な文献と知恵の一大パノラマであり,キリスト教の精神だけでなくヨーロッパの生活や文化を考えるうえでも比類のない第一級の資料である。巻末には160頁に及ぶ解説を付す。
東方正教と西方カトリックの長年にわたる根強い対立があり,神学的な大論争が起こると両者の歩み寄りはますます困難になった。著者はそれぞれのあり方を明らかにし,互いの教会や儀式に触れ,遠い存在である東方キリスト教の本質や背景を伝える。
フッサール現象学によれば,在るかどうか,真であるかどうか,善いかどうかは「私」の経験に依存する。本書はデカルト哲学を参照軸として,こうした相対主義を正面から批判する。極めて相対主義的で利己主義的な現代社会の風潮に一石を投ずる哲学研究である。